はじめに
実数、複素数、虚数、有理数、無理数、整数、自然数…
数の種類を表すことばはたくさんありますが、あなたはこれらのことばを理解できていますか?
大学受験では、問題に「実数解を求めよ」という条件が書かれていたり、新しい文字を使う場合自分で条件を定義しなければならなかったりと、これらのことばの正確な理解が求められています。もし間違ってことばを用いてしまった場合、数字はすべて合っているのに0点…ということもありうるのです。
ことばの意味を正確に理解することは、減点させない解答を書く上で非常に大事です。わかっている気になっていないか、この機にチェックしましょう!
実数とは?
実数とは「存在するすべての数字」
結論から言ってしまえば、実数とは「存在するすべての数字」です。1, 2, 102939326, √3, ½, 0、すべて実数に入ります。
この説明ではわかりにくいと思うので、「存在しない数字とは何か」ということを考えてみましょう。
実数の反対は「虚数」
存在しない数字とは、ずばり「虚数」です。存在しないものの、これを定義すると数学の計算が簡単にできるようになるため、今でも使われています。
具体的には、2乗すると-1になる数を「i」と表し、これを虚数と呼んでいます。
虚数、複素数と実数の関係
複素数はすべて、実数a,bを用いて、「a+bi」の形で表すことができます。たとえば-7+3i、4+9iなどなど。
ここで気をつけてほしいのは、a,bは実数であるので、0になりうるということ。なので、
2i(a=0, b=2のとき)
i(a=0, b=1のとき)
5(a=5, b=0のとき)
といった数も複素数に含まれます。
図に表すと、
こうなります。
特に複素数と虚数は間違えやすいので、この図をしっかり覚えていてください。


実数の中にある様々な数
実数がなにかわかったところで、その実数の中にある様々な種類の数を見ていきましょう。
有理数・無理数
有理数とは
です。
たとえば⅓, 100/3, 9など。m=1にすればいい話なので、もちろん整数も入ります。
反対に無理数とは
のことです。πや√2などなど。
ここで重要なのが、「ある少数が分数で表せるかどうかの見分けかた」です。
1.12938192…
0.34343434…
923.3924923…
これらの少数を分数で表せるかどうか、あなたはわかりますか?
おもな少数は、下の3つに分類することができます。
・有限小数…0.23や10.958のように、終わりのある少数
・無限小数...4.12930...のように、終わりのない少数
ー循環少数…3.1231231231...のように、ある桁から一定の数字の列が繰り返される少数
ー循環しない無限小数
このうち、分数の形で表すことができず、無理数になるのは循環しない無限小数のみです。
有限小数と循環小数は分数の形で表すことができるため、有理数とみなされます。
有限小数を分数の形で表すことができるのは明らかだと思います。たとえば0.23であれば、23/100となるわけです。
ですが、循環小数をどうして分数の形で表すことができるのかは、わからない方もいると思うので、簡単に説明します。
先に出した3.1231231231...の例で考えてみましょう。
k=3.1231231231...とおくと、
1000k=3123.1231231...です。
よって、
1000k-k=3120
∴k=3120/999=1040/333
よって、循環小数kは分数の形で表せます。
このように、循環小数の、繰り返される一定の数字の列を打ち消すような数式を立てることで、循環小数は分数の形で表すことができ、それゆえ循環小数は有理数となります。
以上の内容をまとめた表がこちらです↓
整数と自然数
整数とは、0に1を足したり引いたりしてできる数のことです。
つまり、..., -5, -4, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, 4...といった数のこと。0も含みます。
自然数は、これの整数のうち、正の数字を指します。1, 2, 3, 4...のことです。
重要なのは、高校数学においては、「自然数は0を含まない」ということです。これはうっかり間違えやすいのできちんと覚えましょう。
自然数についてはこちらの記事で詳しく解説されています!
大学受験における「お約束」
ここまで、実数や複素数、有理数など、高校数学における数の種類について説明してきました。これらの数の種類は、そのものが問題になるというよりも、問題文を正しく理解したり、解答の中で自分が設定した文字の値の範囲を定義したりするのに必要な知識です。
そこで、この章では、そういった問題文の理解や、文字の値の範囲の設定において、大学受験でお約束とされている暗黙のルールについて少し紹介します。
文字の範囲は必ず宣言しよう
一般に記述問題では、解答のなかで新しく文字を設定するときは、その文字の値の範囲について言及する必要があります。
たとえば先ほどの有理数の定義の際に用いた
は、nとmという文字を新たに登場させたので、( )の中でnとmの範囲について言及しています。
このように記述問題で解答のなかで新しく文字を設定するときは、その文字の値の範囲について言及しなければいけません。
大学入試の記述試験では、文字の範囲について特に言及しない場合、その文字は実数としてみなされることが多いです。それなのに整数として扱ってその後の解答を書いてしまうと、減点されるので気をつけてください。
有理数・整数・自然数・実数の楽な表し方
「但し、nとmは整数である」
「kは自然数で、lは有理数である」
これをいちいち解答に書くのが面倒くさいあなた。もっと楽に書ける方法があります。
それは、
です。
種類を示す文字というのは、数の種類ごとに割り当てられたアルファベットのことです。具体的には、
・有理数…Q
・整数…Z
・自然数…N
・実数…R
です。
つまり、さきほどの例だと、
「但し、nとmは整数である」→「n,m∈Z」
「kは自然数で、lは有理数である」→「k∈N, l∈Q」
と表せるわけです。
この表記方法を知っておくと、解答を書く時間が大幅に短縮できますので、ぜひ活用してください!
分母が0にならないよう気をつけろ!
これは暗黙のルールというよりも注意事項ですが、分母に文字を設定するとき、その文字が0になる可能性がないよう、文字の範囲を設定してください。
たとえば、
この書き方では減点される可能性が高いです。
なぜなら、整数は0を含むため、m=0となる可能性があるからです。
少なくとも高校数学においては、分母が0の分数は存在しません。存在しない分数を定義の中に入れてしまっていることは減点対象になりやすいほか、そのあとの解答にも影響します。
きちんと「分母≠0」になっているか?
文字を設定するたびに確認しましょう。
最後に
ここまで、実数をはじめとするいろいろな数の意味を説明し、最後に大学受験で使える小ワザをお伝えしてきました。
このような数の定義や範囲をきっちり理解して使うことは、記述問題の解答で細かい減点を減らすことにつながります。面倒だからと後回しにせず、今全部覚えてしまいましょう!

