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はじめに
数学に出て来る数多くの公式の中でも有名である、相加相乗平均の不等式。
シンプルな形をしていて覚えやすいとは思いますが、あなたはこの公式を証明することはできますか?
単に式だけを覚えていて、なんで成り立つのかはわからない…
というあなた。それはとても危険です。
相加相乗平均に限らず、公式がなぜ成り立つのかを理解しておかないと、公式が成り立つための条件などを意識することができず、それが答案上で失点へと結びついてしまいます。
この記事では、相加相乗平均を2つの方法で証明するだけでなく、文字が3つある場合の相加相乗平均の公式や、実際の問題を解く際の相加相乗平均の使い方についてお伝えします。
大学入試において、どうしても解けないと思った問題が、相加相乗平均を使ったらあっさり解けてしまった、ということは(本当に)よくあります。
この記事で相加相乗平均をマスターして、入試における武器にしてしまいましょう!
文字が2つのときの相加相乗平均の証明
ではまず、一番よく見るであろう、文字が2つのときの相加相乗平均について説明します。
そもそも「相加相乗平均」とは?
そもそも「相加相乗平均」とはどういった公式なのでしょうか。
「相加相乗平均」とは実は略称であり、答案で書くべき名前は「相加相乗平均の不等式」です。
この公式を☆とおきます。
では、証明していきましょう!
まずはオーソドックスな数式を使う相加相乗平均の証明
まずは数式で説明します。といっても簡単な証明です。
a≧0, b≧0のとき、
よって証明できました。
さて、☆にはなぜ、「a≧0かつb≧0」という条件が執拗なほどについてくるのでしょうか。
まず☆は√abを含んでいるので、この平方根を成立させるために、ab≧0である必要があります。
つまり
(a≧0かつb≧0)または(a≦0かつb≦0)
です。
しかし、a≦0かつb≦0のときを考えてみると、
(a+b)/2≧√ab≧0より、(a+b)/2は0以上でなければならないのにも関わらず、
(a+b)/2が0以上となるのはa=b=0のときのみですね。負の数に負の数を足したら負の数になるし、0に負の数を足しても負の数になることがその理由です。
そして、a=b=0は、「a≧0かつb≧0」に含まれています。
よって、☆が成り立つa, bの条件は、
a≧0かつb≧0
であるわけです。
問題を解いているときに、ついここを忘れて、負の数が入っているにも関わらず相加相乗平均を使ってしまい、まったく違う答えが出てしまったりします。
「相加相乗平均を使うときは、使う数がどっちも0以上でないといけない!!!」
と覚えておきましょう。
さて、
が成立するのはどんなときでしょうか。
より、
√a-√b=0
⇔√a=√b
⇔a=b(∵a≧0, b≧0)
のときに、
となることがわかります。
この等号成立条件は、実際に問題で相加相乗平均を使うときに必須ですので、おまけだと思わずしっかり理解してください!
実は図形を使っても相加相乗平均は証明できる!?
さて、数式を使って相加相乗平均の不等式を証明してきましたが、実は図形を使うことで証明することもできます。
上の図をみてください。
円の中心をO、直径と円周が交わる点をA、Bとおき、
直線ABと垂直に交わり、点Oを通る直線と、円周の交点をCとおきます。
また、円周上の好きなところにPをおき、Pから直線ABに引いた垂線の足をHとおきます。
そして、
AH=a
BH=b
とおきます。
ただし、a≧0かつb≧0です。辺の長さが負の数になることはありえませんから、当たり前ですね。
このとき、Pを円周上のどこにおこうと、
OC≧PH
になることは明らかです。
[直径]=[AH+BH]=a+b
より、
OC=[半径]=(a+b)/2
ですね。
ということは、PH=√ab が示せれば、相加相乗平均の不等式が証明できると思いませんか?
やってみましょう。
PH=xとおきます。
三平方の定理より、
BP²=x²+b²
AP²=a²+x²
ですね。
また、線分ABは円の直径であり、Pは円周上の点であるので、
∠APBは直角です。
そこで三角形APBに三平方の定理を用いると、
AB²=AP²+BP²
⇔(a+b)²=2x²+b²+a²
⇔2x²=a²+2ab+b²-(a²+b²)
⇔2x²=2ab
⇔x²=ab
⇔x=√ab(a≧0, b≧0)
よって、PH=√abを示すことができ、
ゆえに、
を示すことができました!
等号成立条件は、OC=PH、つまり
Hが線分ABの中点Oと重なるときですから、
a=b
です!
文字が3つのときの相加相乗平均の証明
ここまで、文字が2つ(aとb)の場合の相加相乗平均の不等式を証明してきました。
実はこれ、文字が3つのバージョンもあるんです。
³√abcとは、「3乗したらabcになる数」のことです。
それでは証明していきましょう。少々トリッキーなので、しっかりついてきてください。
x≧0, y≧0, z≧0のとき、
x³+y³+z³-3xyz
=(x+y+z)(x²+y²+z²-xy-yz-zx)
=(x+y+z)× ½ {(x-y)²+(y-z)²+(z-x)²}
≧0(∴x≧0, y≧0, z≧0)
よって、x≧0, y≧0, z≧0のとき、
x³+y³+z³≧3xyz
であることがわかります。
この不等式に、それぞれ
x=³√a
y=³√b
z=³√c
を代入してみましょう。
すると、
x³+y³+z³≧3xyz
⇔(³√a)³+(³√b)³+(³√c)³≧3(³√a)(³√b)(³√c)
⇔a+b+c≧3 ³√abc
⇔⅓ (a+b+c)≧³√abc
よって証明できました。
ここでの等号成立条件は、
(x+y+z)× ½ {(x-y)²+(y-z)²+(z-x)²}=0
⇔(x+y+z=0)または(x=y=z)
⇔x=y=z(x≧0, y≧0, z≧0より、x+y+z=0を満たすのはx=y=z=0のみ)
これに
x=³√a
y=³√b
z=³√c
を代入して、
³√a = ³√b = ³√c
⇔a=b=c
です。
この公式を使った問題は、あとで出てきます!


問題での相加相乗平均の使い方
公式が証明できたところで、公式を使って問題を解いてみましょう。
等号が成立する条件をきちんと示そう
まずはこの問題を解いてみてください。
【問題1】x>0のとき、
の最小値を求めなさい。
【解説2】
問題を眺めていて、相加相乗平均が使えそうだな…と思う箇所はありませんか?
そう、
ここです!
相加相乗平均の不等式により、
と答えようとしたあなた、それを答案に書くと、大幅に減点されるでしょう。
x+1/x≧2
という式は、単に「2以上になる」と言っているだけで、「2が最小値である」とは一言も言っていません。つまり、最小値が3である可能性もあるわけです。
ですから、x+1/x=2、つまり等号成立条件を満たすxが存在することを証明しないと、(x+1/x)の最小値が2だから(x+1/x)+2の最小値が4〜なんてことは言えないのです。
における等号成立条件は、a=bでした。
つまり今回の等号成立条件は、
x=1/x
⇔x²=1かつx>0
⇔x=1
となり、x+1/x=2を満たすxが存在することを示すことができました。
これを書いて初めて、最小値の話を持ち出すことができます。
この等号成立条件は書き忘れて大減点をくらいやすいところですので、くれぐれも注意してください。
【問題2】x>0のとき、
の最小値を求めなさい。
【解説2】x>0より、相加相乗平均の不等式を用いて、
等号成立条件は、
2/x=8x
⇔x²=¼
⇔x=½ (∵x>0)
よって、求める最小値は8である。
打ち消せるかたまりを探す!
【問題3】x>0, y>0のとき、
の最小値を求めなさい。
【解説3】
どこに相加相乗平均の不等式を使うかわかりますか?
このままでは何をしても文字は打ち消されません。展開してみましょう。
x>0, y>0より、相加相乗平均の不等式を用いると、
等号成立条件は、
6xy=1/xy
⇔(xy)²=⅙
⇔xy=1/√6(∵x>0かつy>0)
よって、6xy+1/xyの最小値は2√6であるので、
(2x+1/y)(1/x+3y)=5+6xy+1/xyの最小値は、
2√6+5
打ち消せるかたまりがなかったら作る!
【問題4】x>-3のとき、
の最小値を求めよ。
【解説4】
これは一見、打ち消せる文字がありません。
しかし、もしもないのであれば、作ってしまえばいいのです!
とおきます。このとき、
となります。
x>-3より、相加相乗平均を用いて、
等号成立条件は、
x+3=1/(x+3)
⇔(x+3)²=1
⇔x+3=±1
⇔x=-2(∵x>-3)
よって、A+3の最小値は1であるので、求める値であるAの最小値は-2
【問題5】x>0のとき、
の最小値を求めなさい。
【解説5】
x>0より、相加相乗平均を用いて、
等号成立条件は、
x=x=1/x²
⇔x³=1
⇔x=1
よって、求める最小値は 3