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はじめに
2次方程式なら解けるけど、3次方程式はどう解くかわからなくなる…
次数の大きい方程式はいつも変な計算になってミスしてしまう…
高次方程式は、数学の中でも「計算ミス」「ミスの前にそもそも解けない」という事態が起きやすい単元です。
ですが、決まった解き方を自分の中で持っておくことで、ほとんどの高次方程式に対応することができます。
この記事では、3次以上の高次方程式の解き方を説明します。
よりミスが少なくなる解き方を説明しますので、ぜひ実践してみてくださいね!
まずは因数定理をマスターしよう
高次方程式を解く際に絶対にマスターしておくべきなのが、因数定理です。
必要条件の証明
まずは「f(x)が(x-a)で割り切れる⇒f(a)=0」つまり「f(x)が(x-a)で割り切れるとき、必ずf(a)=0となる」ことを証明します。
「f(x)が(x-a)で割り切れる」
これを数式で表してみましょう。
(x-a)で割ったときの商をQ(x)とおくと、
f(x)=(x-a)Q(x)
ですね。
ここにx=aを代入してみます。
まず、x-a=0 ですね。
0に何をかけても0は0なので、Q(a)がどんな値であろうと、
f(a)=0
です。
よって、
「f(x)が(x-a)で割り切れるとき、必ずf(a)=0となる」ことを証明できました。
十分条件の証明
次に、「f(a)=0⇒f(x)が(x-a)で割り切れる」つまり「f(a)=0となるとき、必ずf(x)が(x-a)で割り切れる」ことを証明します。
先ほどの証明より少しわかりにくいですが、しっかりついてきてください。
f(x)は、(x-a)で割ったときの商をQ(x)、余りをRとおくと、f(x)がどんな値を取ろうとも
f(x) = (x-a)Q(x)+R…①
で表すことができます。
①にx=aを代入してみると、
f(a) = 0×Q(a)+R = R より、f(a)=Rであるとわかります。
この形において、「f(a)=0」とはどういうことでしょうか。
f(a)=R
f(a)=0
ですから、R=0であるとわかります。
ここでR=0を①に代入すると、
f(x) = (x-a)Q(x)
これはつまり、f(x)が(x-a)で割り切れることと同じです。
よって、「f(a)=0となるとき、必ずf(x)が(x-a)で割り切れる」ことが証明できました。
以上より、
「f(x)が(x-a)で割り切れるとき、必ずf(a)=0となる」
「f(a)=0となるとき、必ずf(x)が(x-a)で割り切れる」
この両方が証明できたので、
「f(x)が(x-a)で割り切れる」ことと
「f(a)=0となる」ことは
同値であることが証明できました。
高次方程式の基本的な解き方
では、いよいよ高次方程式の解き方を説明していきます。
高次方程式といってもその形は無限にありますので、この解き方を覚えておけばすべての高次方程式に対応できる!とまでは言い切れませんが、
少なくとも大学受験レベルの問題であればほとんどに対応できると思います!
まずは因数定理を使ってみよう
f(x)=x³-6x²+11x-6=0 の解を求めつつ、高次方程式の解き方を説明していきます。
まずは因数定理です。おさらいすると、因数定理とは
という定理でした。
つまり、f(a)=0となるaをみつければ、(x-a)でf(x)が割り切れるということです。
試しにx= -1を入れてみましょう。
f(-1)=(-1)³-6(-1)²+11(-1)-6 = -1-6-11-6 = -24
より、f(-1)=0とはほどとおい結果になってしまいました。
ならば、試しにx=2を入れてみます。
f(2)=2³-6×2²+11×2-6 = 8-24+22-6 = 0
f(2)=0になりました!f(a)=0となるaの一つはa=2だったわけです。
つまり、f(x)は(x-2)で割り切れることがわかりました。
f(x)=x³-6x²+11x-6=0は3次方程式だから、解はx=2だけじゃなくてあと2つあるはず。
と考えて、f(a)=0を満たすaを2つ探しても間違いではないのですが、それはだいぶ時間がかかることが多いと思います。
それよりもf(x)=x³-6x²+11x-6を(x-2)で割って、2次方程式を作ったほうが早く解を求められます。そのとき鍵となるのが、「組み立て除法」です。
組み立て除法で時間短縮!
筆算を使って、地道にx³-6x²+11x-6を(x-2)で割るとどうなるか。
ものすごい筆記量ですね。
これを入試本番、狭い計算スペースに書くとなると計算ミスを乱発しそうです。
ここで、多項式を割るときに使いたいのが「組み立て除法」です。
あとで組み立て除法のメカニズムについて説明しますので、まずはやり方を覚えてください。
組み立て除法ではまず下のように、「割られる式の係数」を計算用紙に書きます。
この、「xをはぶいて係数のみを書く」ことで、式の見た目をだいぶスッキリさせることができます。
次に、左に「割る式の係数を、正負逆にした数」を縦に書いていきます。このとき注意するのが、「一番次数が大きい項の係数は書かない」ということです。
今回は割る数は「x-2」、一番次数が大きい項とは「x」ですので、
こうなります。
これがもし「x²-2x+1」であれば、
2
-1
が左に並ぶことになるわけです。
次に、割られる式の係数の中で一番左の数、この場合の1を下におろします。つまり、
こうなります。
そうしたら、この下におろした数と、左に書いた割る数の係数を掛け合わせたものを、
割られる式の係数の中で左から2番目にある数の下に書きます。
そうしたら、今書いた数と、割られる式の係数の中で左から2番目にある数を足し合わせます。筆算するイメージです。
ここですべての数が出そろいました。
さて、もともとの式を思い出してみると、
x³-6x²+11x-6という3次式を、
x-2という1次式で割っているわけです。
つまり、商は2次式になるはずですね。1次式を3次式にするには、2次式をかけなければならないわけですから。
そこで、上の組み立て除法の一番下の段に並んでいる数を左から、項に振り分けていくと、
このような結果になります。商の定数項(この場合の3)よりも右に数字がある場合、それは余りの係数を表しています。
今回はx-2という1次式で割っているので、余りは0次式、つまり定数になるはず。上の表をみると商の定数項よりも右にある数字は0なので、余りは0になります。
つまり、x³-6x²+11x-6をx-2で割ったとき、
商…x²-4x+3
余り…0
となることがわかるのです。
よって、
x³-6x²+11x-6 = (x-2)(x²-4x+3)
とわかりました。
2次方程式まで次数を下げていこう
ここまで来れば、x²-4x+3を因数分解すればいいだけなので簡単です。
たすきがけなり、解の公式を使うなりして求めましょう。
x²-4x+3 = (x-1)(x-3)
以上より、
f(x)
=x³-6x²+11x-6
=(x-2)(x²-4x+3)
=(x-1)(x-2)(x-3)
よって、
f(x)=x³-6x²+11x-6=0の解はx=1, 2, 3であるとわかりました。
組み立て除法の原理
ではなぜ、組み立て除法は成り立つのでしょうか。
一般化して考えてみましょう。
これを、(x-p)で割るとして、このとき、
とおくとしましょう。
この記事は「高次方程式の解き方」、つまり余りは存在しない場合についての記事ですが、ここは組立除法が成り立つことを説明したいので、余りがある場合も含んで説明していきます。
ですね。
これの右辺を展開すると、
となります。
これを踏まえて右辺と左辺の係数を比較すると、
よって、1≦k≦n-1を満たす整数kを用いると、
と表せます。
これを移項すると、
となりますね。
なぜ移項したかというと、組立除法で求める「商の係数」「余り」を表すのが、それぞれbとRだからです。
つまり組み立て除法で計算した結果、上の式の通りになれば組立除法が正しいことが証明できるわけです。
では、組み立て除法に戻りましょう。f(x)と(x-p)を組立除法に移すと、こうなります。
ここで考えてみてください。
組み立て除法において、この赤い丸で囲まれた場所にある数字は、「商の中で、もっとも次数が大きい項の係数」を指しますよね。
いま、商は
で表されていますね。
つまり
赤い丸で囲まれた場所にある数字
=商の中で、もっとも次数が大きい項の係数
=bn-1
なのです。
なのでこれをbn-1に置き換えて次の計算をすると、
こうなりますね。そして先ほどと同じように計算すると、
こうなります。組み立て除法においてこのピンクで囲まれたところは「商の中で、2番目に次数が大きい項の係数」を表すので、bn-2と同じ値になるわけです。
ここからまたbn-2をpとかけて、an-2と足して…と同じことを繰り返していくと、
こうなります。
先ほど、組み立て除法において、商の定数項、つまりb0よりも右に数字がある場合、それは余りの係数を表していると言いました。
今は(x-p)という1次式で割っているので、余りは0次式、つまり定数になりますよね。
上の表をみると商の定数項よりも右にある数字はRなので、余りはRです。
ここで上の表を見ると、
を満たしていることがわかります。
よって、組み立て除法が成り立つことが証明できました。
(2x-1)で割るときはどうする?
今まで組み立て除法を使って解いてきたのはすべて「x-p」という形で割る場合のみ。
ここで、「2x-1」で割るときにはどうすればいいのでしょうか。
結論からいうと、x-pの形に直すのが一番楽です。
x³+2x²-9x-4を2x-1で割るとして考えてみましょう。
x³+2x²-9x-4=(2x-1)Q(x)+R(x)
⇔x³+2x²-9x-4=(x-½ )×2Q(x)+R(x)
1行目の式では商がQ(x)ですが、
割る式を½ 倍した2行目の数では商が2Q(x)になっています。
つまり、割る式を½ 倍すると、商は2倍になるのです。余りの値は変わりません。
では、この方法を使って、x³+2x²-9-4を2x-1で割ったときの商と余りを求めてみましょう。
上の組み立て除法より、
x³+2x²-9x-4=(x-½ )×(x²+5/2x-31/4)-63/8
⇔x³+2x²-9x-4=(2x-1)(½ x²+5/4x-31/8)-63/8
よって、x³+2x²-9-4を2x-1で割ったとき、
商は½ x²+5/4x-31/8
余りは-63/8であるといえます。
これはもちろん、「2x-1」のときに限りません。
割る式の「一番大きい次数の項の係数」がk(k≠1)のときは、
割る式を1/k倍した式で組立除法を使って割り算をしましょう。
求める商は、その計算で出てきた商を1/k倍したもの、
求める余りは、その計算で出てきた余りです。
2次以上の式で割るときはどうする?
さて、今まで扱ってきた問題はすべて、割る式は1次式(x-pや2x-1など)でしたが、これが2次以上になったら組み立て除法は使えるのでしょうか。
x⁴-x³+2x²-4x-1をx²+3x+1で割る場合を考えてみましょう。
1次式のときと同じく、割る式の係数の正負をひっくり返して左におき、
割られる式のもっとも次数が大きい項の係数を下におろします。
次に、おろした1と左にある-3と-1をかけていきます。
下の数と左の数を掛け合わせること自体は1次式で割っていたときと同じですが、書く場所が少し違います。
割る式の係数の中で、上の段にある数(ピンクでかこまれた-3)と1をかけた数(緑でかこまれた-3)は、1次式で割ったときと同様に、次の数(-1)の真下に書きますが、
下の段にある数はそれの右下に書くのです。割られる式の係数のうちの「2」の下ですね。階段状に数字をおいていくイメージです。
こうしたら、次は-1と緑でかこまれた-3を足した数「-4」を、同様に-3と-1にかけていきます。
書く場所は同じです。
同じことをもう1回繰り返して、
いま、x⁴-x³+2x²-4x-1という4次式を、x²+3x+1という2次式で割っているわけですから、
商は2次式になるはずですね。
ということで、
求める商はx²-4x+13, 余りは-39x-14
です!
なぜこのやり方でできるのかの説明は長くなるので省きますが、1次式で割るときの説明と同じ感じで、
とおいて、両辺の係数を比較してbnに関する式を作り、組み立て除法で出て来る値がその式に一致することを証明することで、説明することができます。
気になる方はトライしてみてください!
因数の簡単な見つけ方
高次方程式を解くときは、まず因数を探そうといいました。
実はこのプロセスにはちょっとしたルールがあり、これを知っているとやみくもに探すよりも効率よく因数を探し当てることができます。
高次方程式f(x)=0を満たす有理数解xは、
に限られるのです。
例えば
f(x)=x³-6x²+11x-6=0の定数項は-6、一番次数が大きい項の係数は1なので、
f(x)=0の解は
のいずれかになります。
実際、x³-6x²+11x-6=(x-1)(x-2)(x-3) より、f(x)=0の解はx=1, 2, 3です。
なぜこのようなルールが成り立つか説明します。
f(x)=0がx=b/aを解に持つとしましょう。(ただし、a, bはともに整数で、a≠0)
このとき、f(x)は下のように表すことができます。
この式より、aは一番次数が大きい項の係数の約数、bは定数項の約数であることがわかります。
よって、高次方程式f(x)=0を満たす有理数解xは、
に限られるのです。
ここで注意したいのは、
「有理数解」は上のルールに則る、ということ。
つまり、有理数解の他に、無理数(√が入った数など)の解が存在する可能性がある、ということです。
有理数と無理数に関しては下の記事で詳しく解説していますので、よくわからない人は読んでみてください。
実数とは?複素数・自然数との違いは?意外と知らない定義を解説!