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はじめに
合同式についてイマイチ理解できていないあなた。教科書では発展として扱われていることから、センターにも出題されず、授業をしないことすらある合同式。
ですが、難関大学では合同式の性質を知らないと解けない問題も多々出題されます。
ここでは、合同式とは何かを解説した後に合同式の性質を詳しく説明し、最後に大学入試でよく出題される問題と解き方を説明しています。
合同式をマスターして、確実な得点源にしましょう!
合同式とは「余りだけを見た式」
ではまず、「合同式って何?」という基礎の基礎を説明します。
合同式の意味
合同式とは、
「aをnで割った余りとbをnで割った余りが同じ」(a, b, nはすべて整数、かつn≠0)ということを、
a≡b (mod n)
という簡単な書き方で表した式のことです。
文字だとわかりにくいので、実際に数字を当てはめて考えてみましょう。
7を3で割った余りと、10を3で割った余りは等しいですね。これは合同式で、
7≡10 (mod 3)
と表せるのです。
また、「aをnで割った余り」は、もう一度nで割っても余りの値は変わりませんね。
7を3で割った余りである1を、もう一度3で割った余りは1で変わりません。
なので、「aをnで割った余りがc」(cは整数)だとすると、
a≡c (mod n)
と表すこともできます。
(これは合同式の定義というよりも、説明したように
「aをnで割った余りとbをnで割った余りが同じ」
から導けることなので、覚える必要はありません)
ちなみに「mod」はラテン語から派生した英単語「modulo」の略で、「モッド」と読みます。
modを使わない言い方
a≡b (mod n)
は「エー合同ビー モッドエヌ」と呼びますが、もっと自然な日本語を用いると、
「aとbはnを法として合同である」
と言います。
「法」とはずばり、「割る数」のこと。
「nを法とする」とは「nで割る」、「nを法として合同である」とは「nで割った余りが同じ」
ということを意味するのです。
数学の大学入試で、数式の読み方を答えよなんて問題が出ることはありませんが、
「法」という言葉は問題文の中で使われることがあるので、覚えておきましょう。
合同式の足し算・引き算・かけ算はとても簡単!
合同式は余りを表すだけでなく、簡単に足し算・引き算・かけ算をすることもできます。
式にするとわかりにくく見えますが、足し算・引き算・かけ算については普通の等式と同様に計算ができます、ということです。
1つだけ等式と違うのは、元の数と、pで割った余りは同値として扱われる、ということ。つまり、
101+202は、mod10では1+2と同じであるということです。(101+202 ≡ 1+2 ≡ 3 (mod10))
では、なぜこうなるのか、一つずつ説明していきます。
足し算
まず足し算です。
aをpで割った余りをx, bをpで割った余りをyとおくと、
a≡c (mod p), b≡d (mod p) より、
a=Ap+x
c=Cp+x
b=Bp+y
d=Dp+y
(但し、A, B, C, Dはすべて整数)
と表すことができます。
これらを足し合わせると、
a+b = Ap+x + Bp+y = (A+B)p + x+y ≡ x+y (mod p)
c+d = Cp+x + Dp+y = (C+D)p + x+y ≡ x+y (mod p)
以上より、
a≡c (mod p), b≡d (mod p)のとき
a + b ≡ c + d (mod p)
であるといえます。
引き算
引き算も同様に証明できます。
a-b = Ap+x -(Bp+y) = (A-B)p + x-y
c-d = Cp+x -(Dp+y) = (C-D)p + x-y
以上より、
a≡c (mod p), b≡d (mod p)のとき
a - b ≡ c - d (mod p)
です。
かけ算
かけ算も上の式を使って、
ab = (Ap+x)(Bp+y) = ABp² + (Ay+Bx)p + xy ≡ xy (mod p)
cd = (Cp+x)(Dp+y) = CDp² + (Cy+Dx)p + xy ≡ xy (mod p)
よって、
a≡c (mod p), b≡d (mod p)のとき
ab ≡ cd (mod p)
が証明できました。
実際に計算してみよう
では、実際に計算してみましょう。
【問題】以下の方程式を解け。
①x+3≡8 (mod6)
②x+9≡1 (mod4)
③x-1≡4 (mod7)
④mod9において、x≡4のときの3xの値
【解説】
①x ≡ 8-3 ≡ 5 (mod 6)
②x ≡ -8 ≡ 0 (mod4)
③x ≡ 4+1 ≡ 5 (mod7)
④3x ≡ 3×4 ≡12 ≡3 (mod9)


割り算だけ注意!
足し算・引き算・かけ算については四則演算と同じようにできますが、割り算だけはかなり注意が必要です。
何に注意しなければならないのか?見ていきましょう。
「法」と互いに素のものしか割ることができない
割り算だけは、ある条件を満たさないと、四則演算と同じように割ることができません。
その条件とは「割る数が、法と互いに素であるかどうか」です。
割る数が法と互いに素である場合のみ、合同式において両辺を割ることができるのです。
例) 12≡21 (mod 9) を両辺3で割ると、4≡7(mod 9)となり正しくない。
では、なぜこのようなことが起きるのか説明します。
まず、両辺を割ってもいい場合、つまり「両辺を割る数が、法と互いに素である場合」について説明します。
a, bは整数、mとpは互いに素の整数であるとして、以下の式を立てます。
ma ≡ mb (mod p)
この式において、右辺のmbを左辺に移項すると、
ma-mb ≡ 0 (mod p)
⇔m(a-b) ≡ 0 (mod p)
これはm(a-b)はpで割り切れるということを意味します。
今、mとpは互いに素なのでした。
つまりm(a-b)がpで割り切れるためには、a-bがpの倍数である必要があります。
よって
a-b≡0 (mod p)
⇔a≡b (mod p)
以上をまとめると、
ma ≡ mb (mod p)
⇔m(a-b) ≡ 0 (mod p)
⇔a-b≡0 (mod p)(∵mとpは互いに素)
⇔a≡b (mod p)
∴mとpが互いに素であるとき、
ma ≡ mb (mod p) ⇔ a ≡ b (mod p)
となります。
「mとpが互いに素でない」場合、この証明は成り立ちません。
m(a-b) ≡ 0 (mod p)
⇔a-b≡0 (mod p)
が成立しないからです。
「mとpが互いに素でない」場合、mとpの最大公約数をMとおくと、
p=M×[Mとかけるとpになる数]
と表せます。
つまり、
m(a-b)がpで割り切れるためには、Mはmが約数として持っているので、
a-bが[Mとかけるとpになる数]を約数として持っていればよく、p自体を約数として持つとは限りません。
ですが、入試問題では「法と素でない数で合同式を割らなければならない」問題もあります。
そのときはどうすればいいのか、次章で解説します。
素でない数で割りたい場合には?
といっても、実は先ほど答えを言っています。
“「mとpが互いに素でない」場合、mとpの最大公約数をMとおくと、
p=M×[Mとかけるとpになる数]
と表せます。
つまり、
m(a-b)がpで割り切れるためには、Mはmが約数として持っているので、
a-bが[Mとかけるとpになる数]を約数として持っていればよく、p自体を約数として持つとは限りません。”
つまりmとpが互いに素でない場合は、
m(a-b) ≡ 0 (mod p)
⇔[(a-b)が[mとpの最大公約数Mとかけるとpになる数]を約数として持っている]
となるのです。
文字がごちゃごちゃしていてわかりにくいので、実際の問題を解きながら考えてみましょう。
【問題】
以下の方程式を解け。
3x≡6(mod9)
【解説】
3x≡6(mod9)
両辺を3で割ってx≡2…とやりたくなりますが、それは間違いです。3と9は互いに素ではありません。
ただ、この形だとわかりにくいので、先ほどやったように、左辺を移項して考えてみましょう。
3x-6≡0 (mod9)
⇔3(x-2)≡0 (mod9)
つまり、3(x-2)が9の倍数になるということです。
3(x-2)が9(=3×3)の倍数になるには、x-2がどんな値を取ればいいかはわかりますね。
先ほど私は「a-bが[Mとかけるとpになる数]を約数として持っていればよく」といいました。つまり、
[3と9の最大公約数3]をかけると9になる数、つまり3を、x-2が約数として持っていればいいのです!
よって、
3(x-2)≡0 (mod9)
⇔x-2≡0 (mod3)
⇔x≡2 (mod3)
これが答えです。
最初は少しわかりにくいかもしれませんが、この計算は非常に大事です。しっかり理解しましょう!
2問だけ練習問題を載せておきます。
【問題】以下の方程式を解け。
①5x≡15 (mod3)
②12x≡18 (mod54)
【解説】
①5x≡15 (mod3)
⇔x≡3≡0 (mod3) (∵3と5は互いに素)
②12x≡18 (mod54)
⇔6(2x-3)≡0 (mod54)
⇔2x-3≡0 (mod9)
⇔2x≡3≡12 (mod9)
⇔x≡6 (mod9)(∵2と9は互いに素)