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はじめに
イタリアの数学者フィボナッチによって有名になった、フィボナッチ数列。
多くの不思議な性質を持つこの数列は、大学受験でもよく登場します。
フィボナッチ数列を知らないと解けない問題、というのは基本的には出題されませんが、問題で出てくる数列がフィボナッチ数列であることに気付けるとぐっと解くのが楽になる問題はよく出されるのです。
この記事では、フィボナッチ数列とは何かを説明した後に、フィボナッチ数列の特徴・性質を紹介し、最後に大学受験でよく出る問題を解説します。
知れば知るほど面白いフィボナッチ数列の基礎を、一緒に覗いてみましょう!
フィボナッチ数列とは?
まずは、フィボナッチ数列とは何かについて説明します。
数列で説明
フィボナッチ数列は、「2つ前の項と1つ前の項を足し合わせていくことでできる数列」のことです。数列は「1,1」から始まり、
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21…
と続いていきます。
これを漸化式で表すと、
となります。これがフィボナッチ数列です。
図形で表すと
フィボナッチ数列は、図形で表すこともできます。
まず、1辺の長さが1の正方形を2つならべます。横の長さは1、縦の長さは2ですね。
その横に、1辺の長さが2の正方形をおきます。横の長さは3、縦の長さは2ですね。
このあとも1辺の長さが3の正方形、5の正方形、8の正方形…を並べていって、大きな長方形を作ります。
こうして作られていく長方形の縦・横の長さを並べると、フィボナッチ数列ができます。
フィボナッチ数列の特徴
では、フィボナッチ数列の特徴を説明していきます。
自然界におけるフィボナッチ数列
自然界においては、なぜかフィボナッチ数列がよく出現します。
有名なのはひまわりの種ですね。ひまわりは花の中心に種が隙間なく並んでいますが、よく見ると右回りと左回りに、螺旋上に並んでいることがわかります。
この列は、ほとんどの場合「21, 34, 55」というフィボナッチ数列の中の数になるそうです。
また、先程の長方形を使った下の図形も、自然界によく出現します。
このうずまき、なんとなく見たことはありませんか?
アンモナイトやオウムガイのうずまきは、このような形を描いています。
このように、自然界ではフィボナッチ数が多く出現します。神秘的ですね。
黄金比
あなたは、「一番美しい長方形の縦横比」はなんだと思いますか?
美しいという感覚はもちろん人それぞれですが、古代から長方形の「黄金比」は、
とされてきました。
この長方形には1つ特別な性質があります。
黄金比を持つ長方形から、正方形を抜くと、残った長方形(上図のピンクの箇所)の縦横比は
となります。もとの長方形と同じ縦横比ですね。
つまり、黄金比を持つ長方形から正方形を抜くと、また黄金比を持つ長方形が現れるのです。
美しいと思う長方形を突き詰めたらこの性質がわかったのか、それともこの性質故に美しいと思うのかはわかりませんが、この黄金比は古代ギリシアやエジプトの建築などで用いられてきました。
さて、この黄金比とフィボナッチ数列には実は関係があります。
フィボナッチ数列は
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21...
でした。
また、√5≒2.23606より、黄金比は
といえます。
ここでフィボナッチ数列の隣り合う数どうしの比を考えてみます。
2 : 3から始めると、
2 : 3 = 1 : 1.5
3 : 5 ≒ 1 : 1.666666
5 : 8 = 1 : 1.6
8 : 13 = 1 : 1.625
13 : 21 = 1 : 1.61538
…
となり、だんだん黄金比に近づいていくのがわかりますね。
このように、フィボナッチ数列は黄金比ともつながっているのです。
これは数3の収束を使えば証明することができます。興味のある方はやってみてください!


隣同士の項は互いに素
フィボナッチ数列の隣同士の項は、必ず互いに素です。「互いに素」とは、2つの整数が1以外の共通の約数を持たないことを指します。
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これは背理法と数学的帰納法を用いて説明することができます。
まず、フィボナッチ数列を漸化式で定義しましょう。
n≧1において、
A1 = 1…①
A2 = 1…②
An+2 = An+1 + An…③
では、フィボナッチ数列の隣り合う2項であるAk+1とAkが、2以上の共通の約数pを持つと仮定します。(kは2以上の整数、pは整数)
この仮定の元で起こる矛盾を見つければ、仮定が正しくない、つまりフィボナッチ数列の隣り合う2項は2以上の共通の約数を持つことはなく、互いに素であることがわかるのです。(背理法)
Ak+1とAkはpを約数として持つので、整数m, n(m,n ≠0)を用いて
Ak+1=mp
Ak=np
と表すことができます。…④
③にn=k-1を代入すると、
Ak+1 = Ak + Ak-1
より、④と合わせて
Ak-1 = mp-np = (m-n)p
と表すことができます。
これを繰り返していくと、A1, A2もpを約数として持つことになりますね。
ですが、①②よりA1=A2=1で、2以上の整数pを約数として持つことはありません。
よって矛盾が生じ、仮定が正しくないことがわかりました。
フィボナッチ数列を用いた問題
フィボナッチ数列は大学受験で出題されることも多々あります。ここでは、特に出やすい「階段の昇り降りの問題」と「一般項の求め方」について説明します。
階段の昇り降り
【問題】
階段を1歩か2歩で上がるとき、9段の階段の上がり方は何通りあるか。
【解説】
この問題は、9段を一気に考えようとするとうまくいきません。
発想を逆転させて、「一歩前にどこにいるか」を考えるべきなのです。
例えば4段目にいる人のことを考えてみましょう。
いま、階段は1歩か2歩でしか上がらないので、
この人はこの一歩前には「2段目か3段目にいる」ことになりますね。
よって、4段目への行き方は
([2段目への行き方の数]+[3段目への行き方の数])通り
あるということです。
つまり、3≦n≦9においては、
「n段目への行き方は、([n-1段目への行き方の数]+[n-2段目への行き方の数])通りある」
が言えるのです。
1段目への行き方は1通り、
2段目への行き方は2通り(1段ずつ上がっていく行き方と一気に2段上がる行き方)であることを考えると、
3段目への行き方は1+2=3通り、
4段目への行き方は2+3=5通り、
5段目への行き方は3+5=8通り、
6段目への行き方は5+8=13通り、
7段目への行き方は8+13=21通り、
8段目への行き方は13+21=34通り、
9段目への行き方は21+34=55通り
よって、55通りです。
この「前の2つの数字を足す」という計算は、フィボナッチ数列とまったく同じです。よって出て来る数字もフィボナッチ数列と似てきます。
※ただし、フィボナッチ数列は最初の2項が「1,1」であるのに対し、今回の問題は「1,2」で始まるため、単にフィボナッチ数列の9項目を答えにはできません。
この問題はフィボナッチ数列を知らないと解けない、というものではありませんが、フィボナッチ数列に出て来る数をなんとなく知っておくと、計算ミスをした際に「あれ、出てくるはずの数と違うぞ…?」と気づくことができます!
一般項を求めよう
【問題】
n≧1において、以下の漸化式で定義される数列の一般項を求めよ。
【解説】
これはフィボナッチ数列を漸化式で表したバージョンですが、解き方は他の漸化式と同じです。
これがフィボナッチ数列の一般項です!