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はじめに
プラスチックごみの削減を目指し、7月からスタートしたレジ袋の有料化。みなさんは、その背景にさまざまな環境問題が絡んでいることを知っていますか? 例えば、プラスチックによる海洋汚染。プラスチックは自然界では完全に分解されないので、海のごみとして増え続けるばかり。なんと、房総半島沖の深海から35年前に製造されたハンバーグの袋が原型のまま残っているのが発見されたのだとか。また、ウミガメがクラゲと間違えてビニール袋を食べてしまうこともあるそうです。消化できないので常に満腹だと勘違いし、他の餌を食べずに餓死してしまうといった、生態系への影響も懸念されています。
今回は、世界の海に目を向けながら、今後ますます深刻化する海洋プラスチック問題について一緒に考えてみましょう。
2050年には、プラスチックごみが魚の量を上回る⁉
すでに世界中には1億5,000万トンもの海洋プラスチックごみが存在しています。さらに年間800万トンの廃プラスチックが海に流れ込んでおり、これはジャンボジェット機5万機の重さに相当するほど大量です。このままだと2050年には「海洋プラスチックごみが魚の量を上回ってしまう」とも言われています。
海洋プラスチックごみ問題でもう一つ注目したいのが、「マイクロプラスチック」です。これは、5mm以下の細かいプラスチックのこと。海に廃棄されたプラスチックが紫外線や波の影響を受け、長い年月をかけて細かくなったものなどを指します。
また、私たちが使っている研磨剤入りの歯磨き粉や洗顔スクラブなどにも、元々マイクロプラスチックが含まれています。それらは細かすぎて下水処理しきれず、川から海へと流れ出てしまうものもあるのです。
マイクロプラスチックの最大の問題は、海中にある有害物質を吸収しやすいということ。有害物質を含んだマイクロプラスチックを魚が食べ、私たち人間や海鳥などがその魚を食べると、どうなってしまうのでしょうか。人体や生物への具体的な影響はまだ明らかになっていませんが、深刻な問題が起きてからでは遅いため、決して軽視できません。
そして、マイクロプラスチックは半永久的に海中に残り、回収も不可能です。そのため、原因となるプラスチックごみをこれ以上増やさないことが大切です。
琵琶湖と世界のプラスチックごみ問題に、長浜バイオ大学が挑む!
深刻なのは世界の海だけではありません。日本一大きい湖、琵琶湖もプラスチックごみの問題を抱えているのです。昨年6月に滋賀県が行った調査によると、湖の底にあったごみのうち、全体の体積の70%以上がプラスチックごみだと判明! 同様に、マイクロプラスチックの存在も確認されました。
琵琶湖畔にキャンパスを構える長浜バイオ大学では、琵琶湖や海に漂うマイクロプラスチックによる汚染を防ぐため、バイオの視点から日々研究が行われています。
アニマルバイオサイエンス学科の小倉 淳教授は、マイクロプラスチックを食べて分解する微生物や小さな藻(微細藻類)の力に着目。実用化のための、培養水槽の開発に取り組んでいます。実用化されれば、琵琶湖の水をきれいにできるだけでなく、海洋でのマイクロプラスチック浄化に使えると考えられます。
さらにこの研究は、琵琶湖にとどまらず世界の海での活用が期待されています。実は、世界の海洋プラスチックごみの60%以上が、東南アジアから流出したもの。つまり、東南アジアからの流出を防がないと、海洋プラスチックごみ問題の根本的な解決にはならないのです。この研究が東南アジアで実用化すれば、琵琶湖生まれのバイオの力が、世界の海洋プラスチックごみ問題を解決する第一歩になるかもしれません!
長浜バイオ大学 3年次生 河田吉弘さん
海洋プラスチックごみ問題の解決に挑み続けている、バイオサイエンス学科3年次生の河田吉弘さんに、その研究の魅力を聞いてみました!
――微細藻類による実証実験にはどんな魅力がありますか?
私が最も興味を持っている藻類は、多くの可能性を秘めた生物です。現在行っている実証実験の過程でも、従来とは違う新たな利用価値を見出すことができました。実験を繰り返すと、次々と新しい発見があるのは藻類の魅力ですね。
――小倉教授の人柄を教えてください。
強い信念を持った先生で、初めてお話した時はとても緊張したのを覚えています。しかし、マイクロプラスチックの実験を通して感じたのは、とても親身に教えてくださるということ。私たち学生の意見を尊重し、のびのびと研究が進められるよう働きかけてくれる本当に尊敬できる先生です!
900時間以上の充実した実験時間と、研究レベルの高さが魅力
――長浜バイオ大学に進学を決めた理由はなんですか?
高校生の頃からとにかく実験が好きで、いろいろな実験をしてみたいと思ったのが一番の理由ですね。長浜バイオ大学は、3年間で学生の実験時間が900時間以上と、実習・実験に集中できる環境が整っています。大変かもしれませんが、私のように実験好きな人にとっては、充実した大学生活が待っているはずです。
――長浜バイオ大学の魅力を教えてください!
さまざまな研究に挑戦できるのは、長浜バイオ大学の魅力だと思います。なかでも、1年次生で受講できる「バイオ実験夢チャレンジ」は自慢の授業です。これは、先輩やプロの研究者の指導を受けながら、自分の関心のある研究に取り組むという授業。入学したての1年次生が、1年間を通してじっくりと研究を行うことで、「バイオの学び」を肌で感じることができたと思います。
最先端の設備と高い研究技術力も魅力の1つです。理化学研究所で働いている卒業生の先輩も「君たちが思っている以上に研究設備が充実している」と絶賛していました。先生方も、世界的な科学雑誌に論文が数多く掲載されるようなプロフェッショナルな人たちばかり。きっとバイオに興味のあるみなさんにぴったりの大学だと思います!
おわりに
今回は、微細藻類という「生物」のもつ力を通して、世界の環境問題へ挑むバイオの研究を紹介しました。しかし、バイオとは「生物」だけでなく、「物理」や「化学」、「数学」、「工学」、「情報」など、さまざまな分野が融合した新しい領域の学問でもあるのです。「バイオの総合大学」である長浜バイオ大学では、これらの幅広い分野からバイオを学べる環境が整っています。
微細藻類の研究が、海洋プラスチックごみ問題を解決する希望の星であるように、未来のあなたの研究が、世界を救う日も近いかもしれません。その第一歩として、是非大学のホームページをチェックしてみてください!