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はじめに
2021年4月、青山学院大学では、理工学部「物理・数理学科」を「物理科学科」と「数理サイエンス学科」の2学科に改編します。これまでは、2年次に物理系・数理系のいずれかのコースを選択するカリキュラムでしたが、今回の改編ではそれぞれが学科として独立。1年次から、より専門性の高い学びができるようになりました。
今回は、そんな生まれ変わった2学科の先生方に「どんなことが学べるのか」、「卒業後の進路」など、お話を伺ってきました!
データサイエンティストとしての素養を磨く 「物理科学科」
世界トップレベルの「超伝導」研究を筆頭に、最先端の物理学が学べる
物理科学科主任(予定) 三井 敏之教授
――「物理科学科」では、どのようなことが学べるのでしょうか。
青山学院大学の「物理科学科」では、原子や宇宙はもちろんのこと、ナノテクノロジーや超伝導といった最先端物理学など、幅広い分野の物理学を扱っています。宇宙物理の分野では宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究も盛んですし、「超伝導」に関する研究は、世界トップレベルの実績を誇っています。
――「超伝導」とは、一体なんでしょうか?
例えば、リニアモーターカーを動かす際に電流を流すと、抵抗によって莫大なエネルギーが必要となるのですが、超伝導物質にはその抵抗がありません。つまり、超伝導の技術を活用すれば、リニアモーターカーの消費電力を抑えることができます。それ以外にも様々な応用が期待されており、21世紀に最も注目の科学とも言われています。
今回の学科改編で、「超伝導物質」をつくる授業を3年次の実験に組み込んでいます。学生全員が最先端の技術に触れることができるのは、本学科のならではの強みですね。
AIやビックデータなど、最先端の研究に必要なスキルを身につける
――「物理科学科」のカリキュラムについて、その特徴を教えてください。
最大の特徴は、最先端の研究に必要なスキルである「研究手法」を磨けるカリキュラムであるということです。
物理の法則は今も昔も変わっていませんが、昨今はビックデータやAIなどの技術革新によって、研究手法がどんどん変化しています。それにより、地震や波などの地学、生命現象を解明する生物、前述の超伝導など、物理学の分野も広がりを見せるようになったのも事実ですね。
つまりこれからの時代は、プログラミングや画像処理、ビックデータなど、最先端の研究ツールを使いこなすスキルが非常に大切です。本学科では、2、3年次からそれらのツールを実践的に活用する演習や実験実習を多く取り入れています。データサイエンティストとしての素養を段階的に磨くことができるので、社会に出ても即戦力となることが期待できま
――卒業後の進路はいかがですか?
大学院に進学する学生が約半数ですが、理科の教員や金融関係、最近では公務員になる道を選んだ学生もいますね。
一般企業ですと、製造業に就職する学生が多いです。総合電機メーカーで量子コンピュータの実装をしたり、医療メーカーでMRIの開発をしたりと、研究開発職として、幅広い業界で本学の卒業生が活躍しています。
進路が多岐に渡っていることからわかるように、物理学は全てのキャリアパスに通じている学問だと思います。機械や電子機器も、基本は物理学で学ぶ力学や電磁気が元になっていますし、AIやビックデータといったツールの開発にも、物理系の学科出身の人が関わっていることが多いです。非常にバラエティー豊かで、将来の選択肢も広いのが、物理科学科の強みですね。
「目の前の自然現象を深く知りたい」 探求心ある人は是非「物理科学科」へ!
――どのような人に、「物理科学科」に入って来てほしいですか?
「自然現象が好き」、「目の前で移りゆく様々な現象を物理的に解明してみたい」、そんな人にはぜひ来てほしいですね。もちろん、超伝導の研究やJAXAと共同研究をしたいという人も大歓迎です。
また、「理系」に進みたいけど、何をやりたいか迷っているという人にも向いていると思います。自然科学の根幹となる学問として、キャリアパスも広く、色々な経験ができるのが物理学のいいところだと思います。是非、本学の学びを通して、自分の進むべき道を見つけて欲しいと思います。
純粋数学から、社会の諸問題を解決する応用数学まで学べる 「数理サイエンス学科」
金融や感染モデルまで……。無限大の可能性を持った数学の世界
数理サイエンス学科主任(予定) 谷口 健二教授
――「数理サイエンス学科」では、どのようなことが学べるのでしょうか。
「数理サイエンス学科」では代数、幾何、解析といった純粋数学はもちろんのこと、金融工学や生物数学といった社会で役に立つような応用数学についても学ぶことができます。このように純粋数学から応用数学まで幅広く学べる、というのが特徴ですね。
――「数理サイエンス学科」で学べる応用数学には、どのようなものがあるのでしょうか。
例えば、生物数学では、今ちょうど話題になっている「感染症の流行モデル」を研究する研究室があります。この条件で感染症が広がり、こういう条件になれば収束するなど、微分方程式を用いて数理的にシミュレーションする研究です。また、金融工学といった分野もあります。これは、資産運用や取引といった投資に関するリスクを、確率論を用いて研究するものです。
このように、現代社会を取り巻く様々な問題に対し、数学で解決していくというのが応用数学です。「数理サイエンス学科」では、そうした応用数学の科目も幅広く設置しています。
豊富な演習科目で、数学の基礎をしっかり身に付ける
――「数理サイエンス学科」のカリキュラムについて、その特徴を教えてください。
なにより本学科が大切にしているのは、基礎を固めること。基礎をしっかり身に付けるからこそ、応用系に行くこともできるし、純粋数学の研究に取り組むこともできるはずです。その為、3年次までに多くの演習科目を設定し、より数学の理解を深めてもらえるようなカリキュラムを組んでいます。
演習では、問題を解く論理的な思考だけではなく、コミュニケーション能力を身に付けて欲しいと思っています。例えば、わからない問題があった際、ただ「わからない」と教員に質問するのではなく、自分で何がどうわからないのかきちんと理解し、教員に説明できるようなスキル。これは大学生だけでなく研究者にとっても非常に重要です。
というのも、共同研究の場では、お互いが違うことを考えていて、話がかみ合わないこともあるかもしれません。そのような時、きちんと説明するスキルがあれば、研究もはかどりいい結果にたどり着けるのです。本学科の授業を通し、是非コミュニケーション能力を磨いてほしいと思っています。
――卒業後の進路はいかがですか?
大学院に進学して研究者になりたいという学生はもちろんいます。その一方で、全体で見ると数学の教員になる人が多いですね。
一般企業ですと、コンピュータやIT関係の会社に就職する学生が多くいます。最近では、保険会社に進む学生も増えています。なぜ保険会社なのか不思議に思う方もいるかもしれませんが、保険商品を設計する際は、死亡率や事故率のデータを基に確率論を用いて適切な掛け金を割り出したりと、数学が必要不可欠。その専門職としてアクチュアリーという職業もあるんですよ。どんな分野でも、数学で培った論理的な思考は役に立つものだと思いますし、社会的にも強く求められている力だと思います。
数学好きな皆さんと一緒に、1から作り上げる「数理サイエンス学科」
――どのような人に、「数理サイエンス学科」に入って来てほしいですか?
とにかく数学が好きな子、得意な子には是非来てほしいです。高校生の皆さんにとって、数理系学科の卒業後のイメージが湧きにくいかもしれませんが、「いろいろありますよ」と声を大にして言いたいですね。前述の通り、ITや金融など、将来の道はみなさんが思っている以上に広いので、臆せず入って来てほしいです。
また、新しいものをつくるのが楽しいと感じる人も大歓迎です。「数理サイエンス学科」は新しく立ち上がったばかり。大変なこともあるかもしれませんが、教員だけではなく、学生と一緒にこれからの「数理サイエンス学科」をつくりあげて行きたいと思います。
おわりに
いかがでしたか? 「物理科学科」も「数理サイエンス学科」も、基礎から応用まで幅広い領域が学べる充実したプログラムが特徴です。進学先に悩んでいる理系のあなた。栄えある第一期生として、青山学院大学の物理と数学の世界へ、飛び込んでみてはいかがでしょうか。より詳しい情報は、青山学院大学のホームページでチェックしてみてくださいね!