実は⾝近な“法学”︖ ⽇本初! 青山学院大学法学部の「ヒューマンライツ学科」に迫る 

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はじめに

皆さんは、「法学部」という学部にどんなイメージを抱いていますか︖ 「偏差値が⾼い」「講義の内容が難しい」「六法全書とにらめっこで大変そう……」「弁護士、検察官、裁判官などの法曹を目指す人が集まっている」――人それぞれ、色々なイメージを持っていると思います。

でも実は、皆さんが考えているよりも、法学部の学びはもっと⾝近なものなんです。たとえば、買い物をするたびに⽀払っている消費税や何気なく発信しているSNS、これから⾝近になる⼤学の学費……これら全てに、 法律や法学部の学びは関係しています。

そこで今回は、青山学院大学の法学部長 申 惠丰先生に「法学部」の学問について、さらに、2022年4月開設予定の「ヒューマンライツ学科」についてお話を伺ってきました!



【プロフィール】

申 惠丰 [SHIN Hae Bong]
青山学院大学 法学部長。研究テーマは「国際人権法」。著書に『国際人権入門―現場から考える』岩波書店、『国際人権法―国際基準のダイナミズムと国内法との協調【第2版】』信山社など。

先生教えて! そもそも「法学」とはどんな学問なのかを理解しよう

――法学とは、何を学ぶ学問ですか?

法学と聞くと、六法全書に向き合いながら条文を暗記するといった無味乾燥な勉強を想像する人もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。とても人間臭い学問です。

法学とは、憲法や法律という、国や社会の基本的な枠組みを作っている制度やルールについて学び、またそれを社会の様々な問題状況に対して実際に活かしていくための考え方を学ぶ学問です。社会における問題について、人間的な想像力・共感力を持って理解し、論点を冷静に見極め的確に分析・評価し、論理立てた議論を、説得力をもって表現する極めて知的な作業です。

――法学部では、政治についても深く学ぶことになりますよね。

法学部で学ぶ法は色々ありますが、一番基本的なものが憲法ですよね。国の最高法規であって、国の統治の基本を定めている重要な法です。憲法を学ぶことによって、現行のような規定に至るまでの歴史、さらに権力をもった人はいかにそれを濫用しやすいかを学びます。
現代の国家では、日本もそうですが、一人の人間ないし一つの機関が権力を独占するようにはなっていません。国の権力を立法権・行政権・司法権の3つにわけて、三権分立の仕組みで国を運営する仕組みができています。

法というのは議会(国会)を中心としてできるものですので、法と政治は切っても切れない関係にあります。議会をはじめとする政治プロセスを通じて作られる法をあわせて学ぶことで、「政治と法がいかに深い関係があるか」ということを深く理解できます。

――法や政治を学ぶことで、具体的にはどのような力が身につきますか?

弁護士や検察官になるというのは法学部の学生の伝統的な進路の一つですね。でも、法学部で学ぶことで開ける道はそれだけではありません。法学は、論理を組み立てて、文章力=説得力で勝負する学問ですから、法学を学ぶと、社会の様々な問題について、今ある法をどのように適用できるか(解釈論)、また今ある法が不十分な場合にはどのような法を作るべきか(立法論)という観点から、根拠をもって説得的に議論する力(分析力・表現力)が身につきます。

――高校生にとって身近に感じられる法学について教えてください。

すべての高校生にとって非常に身近なものは、校則でしょう。たとえば髪の毛の「地毛証明」を求めたり、下着の色を指定したりする学校の校則があったりします。果たしてそれは子どもの人権を侵害するのではないかということを、「子どもの権利条約」について考えることができると思います。国連で採択された「子どもの権利条約」は、18歳未満の人を「子ども」とし、子どもに保障されなければならない人権について定めています。

また、日本でも18歳選挙権が導入されましたが、学校の構内で高校生が政治的な意見表明や選挙活動を行う場合、学校はそれを規制できるのか、できるとしたらその法的根拠はなにか。このようなトピックはいずれも重要な法学のテーマです。

目的意識をもって学べる「ヒューマンライツ学科」は従来の法学部と大きく違う!?

――法学というのは、社会人として生きていく上で大切な学問ですね。それでは、新設予定の「ヒューマンライツ学科」ではどういった学びが得られるのでしょうか?

本学の法学部では、2013年度から「ビジネス法コース」「公共政策コース」「司法コース」「ヒューマンライツ・コース」の4つのコース制を敷いています。その中でも、他大学にないユニークなコースが、「ヒューマンライツ・コース」になります。この学びをより本格的に展開しようと「ヒューマンライツ学科」を設置しました。

法というのは、突き詰めて考えると「人の人権を守るためにある」と言っても過言ではないと思うんです。世界人権宣言に謳われているような国際社会の共通の価値としてのヒューマンライツを念頭に、社会の中にある人権問題の解決のためという目的意識をもって法を学ぶ学科です。
そのために、憲法上の人権はもちろん、子どもの権利条約のような国際人権法上の観点からも、人権問題について考えていきます。

――従来の法学部の学びとはどう違いますか?

従来の法学部における人権の学び方というのは、まず憲法や法律の条文から入る静的なものです。一方で、ヒューマンライツ学科では、条文と実際の社会問題をひっくり返して、まず社会の中にある人権問題に目を向け、そこに法をどう活かしていけるかを考えます。逆のアプローチで学ぶことで、問題意識をもって学んでいくことができるんです。これがとても大事です。

研究内容としては、「貧困と人権」「ジェンダーと人権」「性的マイノリティと人権」「子どもと人権」「ビジネスと人権」など多彩なテーマ別科目がありますし、世界の人権問題や人権法について英語で学べる科目もあります。

――学科となることによって、これまでと大きく変わる点はどこですか?

ヒューマンライツ学科独自の必修科目があります。

1年次は、学部共通必修科目のほか、学科独自の必修科目として、ドキュメンタリー映像や当事者の話を通じて人権問題を知ることから始める「ヒューマンライツの現場」を1年間かけて学びます。この授業を通して実際の問題に触れ、4年間法学部で法学を学ぶ意義を考えます。

2年次には、憲法上の人権だけではなく、国際人権法上の人権もあわせて学べる「人権法入門」が必修となっています。

また、例えば貧困による人権問題解決のためには経済学や財政学、福祉国家論などの知見も必要であるように、人権問題について考えるには法学だけではなく隣接の社会科学分野からのアプローチも重要です。「政治学入門」「経済分析入門」「公共政策入門」の3科目のうち2科目が1年次の選択必修であるなど、学際性も重視しています。法学だけに視野を絞った考え方はしてほしくないと思っています。

2年次以降は、上記の通り「貧困と人権」「ジェンダーと人権」「性的マイノリティと人権」「ビジネスと人権」など多彩なテーマ別科目、世界の人権問題や人権法について英語で学べる科目などがあり、また、政治学・経済学・公共政策という隣接分野の科目も充実しています。

――目的意識をもって学べるカリキュラムになっているんですね。他にユニークな点はありますか?

ジャーナリズムの役割を強く意識しています。社会の中に人権問題があっても、それを報じるメディアがなければ問題はなかったことになってしまいます。当事者がただ孤独死していくということにもなりかねません。したがって、人権意識をもったジャーナリストが取材し、報道することによって社会に知られる構造があります。

「ジャーナリズム論」「ジャーナリズム実習」のような科目を置いて、人権問題を報道するメディアの役割を認識してもらうカリキュラムを組んでいます。実習では現役のジャーナリストから、どう取材をするのか、どう記事を書くのかを学べます。当事者に取材する際のデリケートな問題もあわせて学べるようになっています。

――より国際的な学科なので、授業では英語も使うのでしょうか?

学科名がカタカナであるように、“国際的に認められている人権”ということを意識しています。日本国内だけではなく世界における人権も取り上げますし、国際人権法に照らして、それを分析するために、人権法に関する英語の文献を読むこともあります。

様々な人権問題について英語で議論をし、英語で発信できるような科目も置いていますので、法学科に比べて英語を使うことも多くなります。

気になる卒業後は?

――国際的な思考も身につけることができるんですね。では、卒業後はどのような活躍を期待しますか?

法学の素養があるというのみにならず、とりわけ、現代社会において生じている様々な人権問題について、当事者の立場に立って問題の所在を理解できる人間的な想像力、論点を冷静に見極められる洞察力、論点について的確な評価を行うことができる分析力、論理的・説得的な文章で論を展開することができる表現力、これらすべてを通じた問題解決能力をもつ人の育成を目指しています。

社会の中で接する人権問題について、それがどのような人権に関わる問題であるか認識できることにくわえ、法を用いてそれを解決するために論理的で説得力のある見解をしめすことによって社会に貢献できるような人材です。

――具体的にどのような職業が考えられるのでしょうか?

進路は色々と想定できます。

企業の法務、人事、CSR部門で働く際には、その知見を十分に活かせますし、弁護士になりたい学生にも最適です。弁護士法が1条で基本的人権の擁護を弁護士の使命としているように、人権保障が役割とされる職業です。この学科を卒業して予備試験を受けたり、法科大学院に進んだりすることも考えられます。

また、法学部では公務員を目指す学生が多いですが、行政の現場でも人権意識をもった人が実務をできるかどうかは重要です。
国際公務員になるのは学部を出ただけでは難しいですが、大学院に進み、国連やユネスコ、ユニセフなどで世界を舞台に活躍する国際公務員も目指せます。

さらに、ジャーナリストも一つの有力な進路になります。人権問題を取り上げて報じる視点、報じる際の留意点などを体得した人がジャーナリストになることは大切です。現に「ヒューマン・ライツコース」を卒業した方がジャーナリストとして活躍中です。

――最後に、どのような学生と一緒に学びたいかを教えてください。

法学については入学してから学べるので、特に予備知識は要りません。ただ、知的好奇心があることが大切です。

子ども、外国人住民、女性、障がい者、被災地の住民、LGBTとも言われる性的マイノリティなど、社会の中で弱者の立場におかれたり疎外されたりすることが多い人々の存在に目を向けることができ、すべての人の尊厳が守られるような社会を作っていくために法学や関連の社会科学(政治学、経済学、社会学など)の観点から考えてみようという意欲のある学生を求めています。
また、普段から本をよく読み、物事を深く考える姿勢がある人、ドキュメンタリー映画などをよく観る人に来てほしいです。

おわりに

申 惠丰先生は、大学で法学部に入り、学べば学ぶほど面白いと感じたそうです。大学院で国際人権法に出会い、ヨーロッパ人権裁判所の判例を原文で読み、こんなに面白い世界があるのかと感動したんだとか。「法学は苦しんでいる人の助けになる実践的な学問」と先生が言うように、決して机上の学問ではありません。

身近なところに問題意識を持ち、想像力・共感力を持って理解し、論理的思考力で解決していく――法学はそんな身近な学問です! 青山学院大学法学部に新設予定の「ヒューマンライツ学科」では、これからの時代を生き抜く上で必要な“国際的に認められている人権”について突き詰めて学ぶことができます。第一期生としてヒューマンライツの世界に飛び込んでみませんか? より詳しい情報は、ウェブサイトでチェックしてみてくださいね!

青山学院大学ヒューマンライツ学科 ※法学部ヒューマンライツ学科 2022年4月開設予定
この記事を書いた人
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