グローバルな課題を解決する化学のチカラ!

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はじめに

応用化学という言葉からどんなイメージを持ちますか? 高校で学ぶ化学から考えると、物質の構造を覚えたり、化学反応式を書いたりするイメージが強いと思います。もちろんこれらは大学で応用化学を学ぶ上でとても大切なことですが、大学での応用化学は、他領域を合わせて学んだり、時代のニーズを反映したり、最先端の研究をしたりと、社会にとってより実践的な学びに挑戦できます。人類の繁栄や地球環境の保全・改善に役立つ物質を創出する物質デザイン系、材料の化学的・機械的特性などの基礎的な知識をもとに新しい材料の開発をめざす材料科学系、バイオテクノロジーの技術を用いて社会に役立つ新技術の開発に応用する生物工学系など……なんだか大学で化学を学ぶのが楽しみになってきませんか?


医療や環境化学の分野で活躍するマイクロ・ナノデバイス

シャーレや試験管の代わりとして注目されているのが、マイクロ化学チップやμTASなどのマイクロ・ナノデバイスです。半導体のICチップの回路には電気が流れますが、マイクロ・ナノデバイスには微量の液体を流すことで、より精密で繊細な化学操作が可能となります。そして、数cmサイズの基板上で細胞を培養したり、ミニチュアの臓器を作ったり、環境化学物質を調べたりすることができます。このマイクロ化学チップの基板に細胞を接着し操作するために、その表面に㎛単位の凸凹構造を形成することが必要となります。その際にプラズマ化学気相蒸着(CVD)法を用いて、硬いDLC(ダイヤモンド状炭素)薄膜を成膜する技術が使われます。医療技術の進歩に深く関わる技術なんですね。

持続可能な資源循環型社会をめざすための研究

持続可能な社会や環境を構築するためにも化学分野の研究が活かされています。工業製品を製造するプロセスでは製品以外の副産物が発生しますが、この副産物には有用な成分が含まれている場合が多くあります。例えば、鉄鋼製造時に発生するスラグの中には、資源枯渇が心配されているリンが多く含まれているので、スラグの中のリンを合理的に活用する技術の研究が行われています。また、工場等が発する産業排熱を有効利用するために、高温型蓄熱材料の研究が行われており、熱伝達媒体と組み合わせることで、思い通りの吸熱と放熱を行う蓄熱モジュールとしての活用が期待されます。「もったいない精神」を工業規模で実現しようなんて、人にも地球にもうれしいですね。

食糧生産に役立つ植物の光感受性に関する分子メカニズムの解明

植物は自ら移動できないため、時間帯や季節による多様な光条件に順応しています。特に地上部では、光の方向に成長する「光屈性」という性質を示し、太陽光を効率的に獲得しています。この機構を探る中で、青色光シグナル伝達因子NPH3の機能制御にRPT2が働いていることが発見され、これら2つのタンパクの働きによって光に対する感受性が調節されていることが分かってきました。現在でも、シロイヌナズナなどのモデル植物を用いて光屈性制御に関わる分子メカニズムを解明する研究が進んでいます。この光屈性のメカニズムを解明すれば、不可避と言われている食糧危機を解決する新たな農業技術の開発につながる研究になります。分子メカニズムから植物の謎が明かされ、人類を救う食糧生産につながるなんてロマンがありますね。

「実工学」を実現しつづけてきた日本工業大学とは?

今ご紹介してきた3つの化学技術研究は、実はすべて日本工業大学基幹工学部応用化学科の研究室で行われているんです。日本工業大学は、1907(明治40)年創立の東京工科学校をルーツに持つ伝統校です。その特色は、社会に役立つ「実工学」の推進です。
埼玉県にある広大なキャンパスには最先端の分析機器や合成装置、化学実験室を備えた応用化学棟、歴史的価値のある工作機械などを収蔵した博物館などがあります。さらにカナダのアルバータ州には研修所NIT-ICCを所有。国内外に充実した環境があります。また、興味・関心に応じて参加できるプロジェクト型の「カレッジマイスタープログラム」は、個人やチームでものづくりにチャレンジできます。このようなものづくりと活発な研究体制が評価され、研究のひとつは2017年の文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に採択されています。
そして、ご紹介した研究でもわかるように持続可能=サステナブルな社会をめざす大学でもあります。キャンパスをエコ・ミュージアム化し、地域を巻き込んだ環境教育も実践し、高い評価を受けているのです。今後の社会を創造するための技術を学ぶにはとても魅力的な大学と言えそうですね。

日本工業大学の学びにふれるチャンス!

日本工業大学基幹工学部応用化学科では、中高生を対象とした「第14回化学・環境・バイオサイエンススクール」を7月28日(水)に開催予定です。学科独自の実験が体験でき、希望者は研究室見学もできるので、ぜひ出かけてみてください。また、完全予約制のオープンキャンパスも開催されます。参加人数制限があるので、興味のある方は早めの申込みがおすすめです。スケジュールの都合で行けないという人はWebのオープンキャンパスを。動画なので日本工業大学の雰囲気がとてもよく伝わってきますよ。

開発系と基礎研究系から選べる神奈川工科大学応用バイオ科学部

神奈川県厚木市にキャンパスのある神奈川工科大学は、工学部・応用バイオ科学部・創造工学部・情報学部・健康医療科学部の5学部13学科を有する理系総合大学です。応用バイオ科学部応用バイオ科学科には、応用バイオコースと生命科学コースの2コースが設置されています。
応用バイオコースは、即戦力となる実力を持つバイオ技術者を養成するためのコースです。「医薬・ライフサイエンス」「食品・植物科学」「環境・微生物学」の3分野を中心として、化粧品・バイオインフォマティクスなど産業界に直結するバイオ技術を身につけることができます。生命科学コースは、変化の多い予測困難な時代に対応できる基礎力を持つ人材を養成するコースです。「生命科学」「理科教育」「情報・データサイエンス」の実践プログラムで生命科学の基礎を身につけ、様々な階層で生命を捉える視点を身につけることができます。産業に直結する技術を身につけるか、生命の解明に取り組むか、科学に興味のある人なら、どちらも魅力的なコースですね。

クリーンエネルギーを研究する工学院大学先進工学部環境化学科

東京都に2つのキャンパスがある工学院大学は、先進工学部・工学部・建築学部・情報学部の4学部15学科を有する理系総合大学です。
先進工学部の環境化学科は、最先端の化学技術によって環境保全や環境負荷の少ない材料・エネルギー開発をめざす人材を育成しています。例えば、環境化学科のエネルギーシステム工学研究室では、CO2を排出しないクリーンなエネルギーシステムの構築を研究しています。下水処理場の汚泥からメタンを、メタンから水素を製造して燃料電池で発電するシステムや、低コストでCO2を取り除くCO2吸収マイクロカプセルを開発。さらに回収したCO2を有用な有機化合物へ合成する研究もスタートしています。気候変動の原因ともいわれているCO2削減をめざす技術開発を学べるなんて、とてもやりがいがありそうですね。

おわりに

高校で学ぶ化学と大学で実践する化学はかなり違うことをご紹介してきました。もし自分の興味と一致する研究をしている大学があれば、ぜひ一歩踏み込んで調べてみてください。あなたの未来につながる道が見つかるかもしれませんね。

この記事を書いた人
    【PR】Studyplus編集部
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