昆虫が世界を救う!? 新たな飼料が地球レベルの食糧危機を解決!

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はじめに

皆さんは、現代の人類や地球が気候変動、資源の枯渇、貧困など様々な問題に直面していることをご存知ですよね。中でも緊急に解決を迫られている問題が「食糧問題」です。今、地球上の人口は爆発的に増えていて、1998年に60億人に達し、現在は78億人を超えています。2050年には97億人を超えると予測されています。これだけ人が増えれば、当然食べるものもそれだけたくさん必要になります。飢餓に苦しむ人が今まで以上に増えるのではないかと心配されているのです。そんな問題を解決するのにも「化学」が活用されていること、知っていますか?


セルロースに次ぐ豊富な資源「キチン」。昆虫が食糧危機を救う?

人口が増えると、必要となる食糧も増えます。米・小麦・トウモロコシといった穀物は人間も食べますが、牛・ブタ・ニワトリといった家畜の飼料としても必要です。実は世界で生産される穀物の半分は家畜の飼料になっているため、今は人間と家畜が穀物を取り合っているのです。さらにエネルギー問題の解決策としてトウモロコシやサトウキビといった穀物はバイオ燃料にも使われつつあり、ますます穀物不足が深刻になってきているのです。
そんな中で注目を集めているのが昆虫です。昆虫食という言葉を聞いたり、コオロギの粉でできたコオロギチップスなどをお店で見かけたりした人もいるかもしれません。けれども、まだまだ普及していないのは、虫を食べることに抵抗感があるという理由だけではなく、人間にとって消化しにくいものだからなんです。甲殻類や昆虫の表皮を構成する「キチン」は、植物由来のセルロースに次ぐ豊富な資源。有効に活用できれば、生態系の中で再生できるため持続可能性もあるのです。消化という問題をクリアできれば、世界の食糧危機を救えるかもしれませんよね。

消化酵素キチナーゼの研究に挑戦! 工学院大学先進工学部生命科学科とは

「キチン」が人間にとって消化しにくいなら、家畜の飼料にすればどうでしょうか。そうすれば人間と家畜で穀物を奪い合うことは避けられます。そう考えたのが工学院大学先進工学部生命化学科の小山文隆教授です。
近年の研究で、これまで動物にとってキチンは動物にとって消化しにくいと考えられていましたが、キチンを分解する酵素「キチナーゼ」が、哺乳類の体内で合成されていることがわかってきました。そこで小山教授の研究室では、キチナーゼの量が動物によってどう異なるかを調べたのです。
その結果、マウス・ブタ・ニワトリの胃では、大量のキチナーゼが作られていることがわかりました。マウスを使った実験では、キチナーゼが消化酵素として作用することを世界で初めて確認! さらに、ニワトリやブタのキチナーゼが甲虫の幼虫の殻のキチンを消化できることも確認しました。ニワトリやブタは代表的な家畜です。世界的に消費量も多いので、キチンを含む昆虫などの生物を飼料となりうることを提案しているそうです。一方、人間・ウシ・イヌなどキチナーゼがうまく働かない動物のメカニズムも調べて、キチナーゼの機能性を高める技術の開発にも繋げていきたいそうです。実現すれば、食糧革命が起こるかもしれませんね。

喘息やアルツハイマーとの関連性あり!? 医療の鍵も握るキチナーゼ

甲殻類の殻や昆虫の外骨格だけでなく、カビなど真菌の細胞壁もキチンからできています。このことから食糧問題だけでなく、医療分野への応用にも期待が高まっています。というのも真菌は様々な病気の原因であり、その抗生物質キチンを分解できるキチナーゼは治療に使える可能性があるからです。キチナーゼに似たタンパク質が、喘息やアルツハイマー病の患者で増加しているという報告もあるのです。他の病気でも同様の結果を示すため、病気の発生や治癒のメカニズムの根本にキチナーゼが関わっていると予想されているのです。食糧危機と病気の治療という、人類にとって2つの大きな悩みをキチナーゼが解決できるなら、その影響力は無限大ですね。

受験日程がリニューアルされて、合格チャンスが拡大!

消化酵素の研究から食糧危機や医療へアプローチする工学院大学は、先進工学部・工学部・建築学部・情報学部の4学部15学科を擁する理工系総合大学です。
少しでも興味が湧いたなら、併願で受験されることをおすすめします。国公立大学・私立大学はもちろん、学内併願もしやすい入試日程です。また、学費の給付や減免など、奨学金制度対象入試も充実しており、学生のやる気を経済面でもバックアップしています。さらに2022年度入試から、大学入学共通テスト利用前期日程(全学部)では、これまでの「3教科型」に加えて「4教科型」の出願も可能となりました。同一学科に2つの方式で出願できるため、合格のチャンスも広がります。B日程は、S日程やA日程、英語外部試験利用日程、大学入学共通テスト利用前期日程の合格発表後に出願可能です。B日程の合格発表後に出願できるM日程、大学入学共通テスト利用後期日程もあります。試験会場は、本学のほか全国17都市に設置。最低限の移動で受験ができ、交通費や滞在費も節約できます。

大きさ1mmの化学モーター開発に取り組む日本工業大学

1907(明治40)年創立の東京工科学校をルーツに持つ日本工業大学は、社会に役立つ「実工学」を推進しています。
基幹工学部応用化学科の先駆物質化学研究室は、MOF(多孔性かつ結晶性の高い有機金属配位化合物)に、化学モーターとしての応用例を新発見しました。MOFの中にフェニルアラニンというペプチドを入れて水に浮かべると、水面上をMOFの粒子がクルクル動き回ります。MOFから出てきたジフェルアラニンはすぐに結晶化するため、水面が正常なままの状態で保たれます。この「MOF-ペプチド化学モーター」は1mmほどの大きさで、発電機や化学物質の探知機として使うことができます。MOFに関する研究は次のノーベル賞分野といわれており、これまでに物質の貯蔵・分離、微細な反応容器としての用途が摸索されています。その中で、化学モーターは全く新しいアプローチです。日本工業大学では、世界をリードする先進技術が、いろんな分野で生まれているんですね。

超低温保存技術で伝統野菜の種子を守る神奈川工科大学

5学部13学科を設置する理工系総合大学の神奈川工科大学。応用バイオ科学部応用バイオ科学科には、応用バイオコースと2020年度に新設された生命科学コースの2コースがあります。
岩本嗣教授の研究室では、種子を超低温保存する技術を研究中です。種子は貴重な遺伝資源ですが、最近では農業従事者の減少によって、日本各地の伝統野菜の栽培継承が危ぶまれています。種子の保存方法としてこれまで採用されてきたのは冷蔵庫での保存。数年間なら種子を守れますが、停電すれば保存が効かなくなります。実際に、東日本大震災での電力供給停止によって貴重な種子が失われてしまいました。そこで岩本研究室では−196℃の液体窒素に種子を漬け、半永久的に保存する超低温保存技術の研究を進めているのです。一度失われると蘇らない種子を、後世に残すことができるなんて、まさにサステナブルですね。
こんな応用バイオ科学科の2020年度の就職率はコロナ禍にも関わらず96.3%と例年並み!内定先満足度も99%。学んだことを活かせる就職が実現しているからなんですね。

おわりに

消化酵素の研究が食糧危機の解決や病気の治療につながること、こうした研究が化学の分野に関わっていることをご紹介してきました。もしあなたが化学が好きなだけでなく、人類全体に貢献するような研究をしたいと考えているなら、研究室のテーマから大学を選んでみることをおすすめします。チェックする研究室の中に、未来の先輩や恩師との出会いがあるかもしれませんね。

この記事を書いた人
    【PR】Studyplus編集部
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