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はじめに
皆さんの地元や近隣の地域に観光旅行に来る方は、どのような人たちでしょうか。
どこから来ているのか。日帰り、それとも宿泊? そして、こうしたデータを活用すれば何がわかるのでしょうか。
地域の観光を活性化させていくためには、まずは観光に訪れる人々の動態を知ること、行動原理を正しく把握することが重要です。観光に来る人たちはどのような好みをもち、何を観光地に求めているのか。また、観光地に行きたいと思わせる要因とはどのようなものなのか。「消費者行動論」や「マーケティング・リサーチ」という授業は、こうした問いに答えるための手がかりを与えてくれます。
そこで今回は、就実大学経営学部でこれらの授業を担当している古安理英子先生にお話をうかがいました。
教えて先生! 大学ではどんな授業をやっているの?
──「消費者行動論」と「マーケティング・リサーチ」は、どんなことを学ぶ授業ですか?
私たちの身のまわりにはさまざまなモノやサービスであふれています。私たちはそれらを買ったり、消費したりして生活をしていますが、その際に「なぜそのモノを購入したのか」、あるいはその逆に「なぜそのモノを買わなかったのか」を考えるのが「消費者行動論」という授業の、ひとつのテーマとなります。
一方、こうした消費者の意識や行動というのは、売り手側からすればとても重要な情報です。これらを調べる方法、調査の手法を学ぶのが「マーケティング・リサーチ」の授業です。
授業では実際にアンケート票を作成して、さまざまなデータを収集することも。たとえばネットショッピングの利用に関する意識や行動についてのアンケート調査、電子マネーの利用状況に関するアンケート調査などを行っていきます。
データを集めて分析すれば、いろいろなことが見えてくる!
──どんなことを研究していますか?
「地域資源」を対象に、それにかかわる消費者の意識や行動を「定量的に」把握・分析することを研究しています。具体的に「定量的に」というのは、アンケート票を作成し、それに基づいて調査を実施。そこで得られたデータを、統計的な手法に基づいて分析することを意味しています。
つまり、データ分析とは、思い込みや主観に基づいた曖昧なものではなく、膨大なデータの中から目的に沿った情報を抽出し、根拠のある客観的な情報を得ることといえます。大学で身につけられるこうした分析手法や作法は、ビジネスパーソンとして働くうえで必須のスキルといえるでしょう。
私が以前ある温泉地で実施した調査研究では、宿泊者の方々にアンケートを実施したうえで、「温泉地に対して何を期待しているか」ということを分析しました。この調査の結果、温泉地への期待として最も重要な要素は「料理」であることが明らかになりました。つまり、「食をベースとした温泉地の魅力づくり」が、旅行者の誘引には有効なことがわかったわけです。
この結果からは、料理を重要視する旅行者をターゲットとすれば良いことがわかりますが、さらに具体的に、これらはどのような人々だろうかということも分析で明らかにすることができます。このように調査を通じてさまざまなデータを収集し、有効なマーケティング施策を考えていくことが、私の研究テーマになっています。
だからおもしろい! データ分析の研究は魅力がいっぱい!!
──これらはどうやって調べたのですか? また、データはネット上にある情報からも得られるのでしょうか?
データ分析をするうえで必要な変数や項目を自分で設定したのち、アンケート票を作成して宿泊者の方々に直接対面でアンケート調査を実施し、データを得ました。
ネットの情報というのは、確かなものから不確かなものまでいろいろあります。この研究で重視したのは、「現地の方々の声をきちんと正確に捉える」こと。そのためには現地へおもむき、自分の足でデータを集め、さらにしっかりとした手順を踏んで分析することが重要になります。
このときの調査では10日ぐらいかけてアンケートを集め、500人ぐらいの方々に回答していただきました。準備にもたいへん時間がかかり、アンケート票は何度も修正を加え、プレテストを実施することで、正確なデータが得られるよう入念に準備を行いました。温泉に通いながらのデータ収集は大変でしたが、それだけやりがいもありますし、データが得られたときには大きな達成感がありました。
──先生の考える研究のおもしろさとは何でしょうか?
地域資源を分析対象にしていますので、「地域のことを知ることができる」のがいちばんのおもしろさです。
もうひとつは、調査によって得られたデータに基づき、さまざまな分析を実施することによって、これまでお話ししたような新たな知見を導き出せる、というところにもおもしろさを感じています。
おわりに
今回、お話をうかがった古安先生がいらっしゃる、就実大学の経営学部では、2年次後期に各コースで長期実習を行いながら、実践的にデータ分析を学ぶことができます。
まず、2023年度4月より新設される経営実践コースでは、4か月間にわたってPBL実習を実施。自治体・企業等と提携し、課題解決型学修を重視した実習、演習、講義を行い、調査分析手法や課題解決について実際の課題を用いて学んでいきます。
そして、地域経営コースでは15週間にわたる長期インターンシップとして、県内の企業・団体でインターンシップを行い、企業経営や地域の課題について理解を深めていきます。また、国際経営コースでは、アジアや欧米に4か月間にわたって長期留学し、外国語で専門科目を受講することにより、実践的な語学の修得と異文化への理解を深めていきます。
ちなみに就実大学経営学部は経営実践コースの新設に伴い、入学定員が60名増員し、160名となります。詳細については、以下の特設サイトからご確認ください。