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はじめに
皆さんは、博物館に行ったことはありますか? プライベートや学校の社会見学などで一度は訪れたことがあるのではないかと思います。そこでは、学芸員と呼ばれる方々が働いています。今回は、実際に学芸員として働かれた経験のある皇學館大学文学部国史学科 長谷川怜先生に、歴史という学問の魅力と、学芸員の仕事や資格取得に向けた学びについて伺いました。
貴重な史料に触れて、自分の歴史像を描く魅力
―― 先生のご専門とその研究の醍醐味を教えてください。
私の専門は日本近現代史で、特に日本の満州進出について研究しています。皇學館大学文学部国史学科では日本近現代史や古文書の読み方の授業などを受け持っています。よく歴史は暗記科目だと受け止めている方がいますが、大学での学びはそんなことはありません。どんなふうに歴史が動いて、どのような結果を生んだのかを、自分で史料から紐解いていくことが大学での歴史学の研究です。つまり、自分で歴史像を描いていくことこそ、醍醐味なのです。また、文字史料だけでなく、写真やパンフレット、音源なども史料として扱います。
―― 実際にどのような取り組みをなさっているのでしょうか。
例えば、大正天皇の皇后・貞明皇后が大正時代に伊勢神宮参拝をされて、神宮皇學館(現・皇學館大学)に立ち寄ったことを記録したフィルムが学内から発見されました。100年前のそうした貴重な映像を発掘、保存し、社会に広く公開する仕事が歴史学に携わる者の楽しみなんです。
また、個人の家や寺社などに眠っている昔の手紙や写真などから当時の社会情勢や暮らしを読み取るような研究もしています。今を生きている人の日記やメールなども、100年後には歴史的に貴重な史料になるかもしれません。時間を超えて、人々の暮らしのありようを考えることが歴史学のおもしろさなのです。
様々なシーンで活躍する学芸員資格
―― 先生は学芸員としても働かれていたのですよね。学芸員の仕事とはどういったものなのでしょうか。
私は東京都千代田区の学芸員として歴史や文化の魅力を伝える仕事をしていました。学芸員の仕事とは、博物館や美術館だけでなく、動物園や水族館で働く際にも必要となる国家資格です。学芸員は展示を企画するほか、史料の収集と保存を行います。また、史料や地域の歴史について調査し報告書にまとめたり、生涯学習の観点から子どもからお年寄りまで幅広い層に向けてワークショップを行ったりすることもあります。また、最新の情報を発信していく必要があるため、学芸員には研究者としての資質も求められます。
学芸員の経験を活かして、現在、私は大学で教えながら、学内の展示や大学史の編纂、一般の方向けの講演会、神社宝物館の外部アドバイザーなども行っています。
様々な仕事に役立つ学芸員課程の学び
―― 学芸員課程での学びは、博物館や美術館で学芸員として働くこと以外に、どのような活かし方がありますか。
学芸員課程での学びは、伝えたいことをわかりやすく魅力的に発信する力を身につけることができ、たとえ学芸員という仕事に就かなくても社会においてとても役立ちます。
例えば、本学では教職課程と学芸員課程の両方を履修する学生が多くいます。学校では博物館に児童・生徒を連れていく校外学習の機会がありますが、先生が学芸員課程を修了していれば、事前学習で学びを深めたり学芸員と連携を取ったりすることがしやすくなります(博学連携)。
また、地方公務員が勤務する行政機関には、教育委員会をはじめとして、文化行政に関わる部署がいくつもあります。学芸員課程を修了した方であれば、博物館や文化財を地域の資源としてどのように活かしていくかという観点で働くことができます。
最近では、企業が文化・芸術活動へ貢献するメセナ活動に注目が集まっています。学芸員の資格を持っていれば、その際にも、企業と文化施設の橋渡し役として活躍していくことができるでしょう。さらに、神職を目指している方であれば、神社の宝物館での活躍の道が開けるかもしれません。
学芸員資格取得に必要な授業とは?
―― 先生は学芸員課程ではどういった授業を担当しているのでしょうか。
学芸員資格は定められた課程をすべて修了することで資格が得られます。その課程の中で、私は「博物館教育論」「博物館展示論」「博物館資料論」という3つの授業を担当しています。
「博物館教育論」とは、生涯学習の教育施設としての役割を果たすための博物館について学ぶ授業です。ワークショップや講座など博物館が行う教育企画を立ち上げる力を養います。授業の中では、座学だけでなく、グループごとに企画を立ち上げ、家紋の由来に関する講座や雅楽装束の体験など様々なワークショップを学生たちが実演します。
「博物館展示論」は、学芸員の主たる業務である「展示」について学びます。一言で「展示」といっても様々な方法があります。例えば、資料を手にとることができるハンズオン展示や火起こし体験をするなどの体験型展示、明治村のような野外展示などもあります。こうした多様な展示方法を学んだ上で、実際にミニ展示を企画し、チラシやキャプションを作成し、分かりやすく伝える工夫をする活動を行っています。
「博物館資料論」とは、古文書や民俗資料、音声、映像など博物館資料にはどういったものがあるのかを知り、博物館がそれらをどう集めて、どう管理し、保存・活用しているのかを学びます。
―― これらの授業に共通して大事にしていることはありますか。
「実践力」を身につけることです。学芸員の採用においては即戦力であることが求められます。そのため、ワークショップや展示の経験が積める皇學館大学での学びは、大きなアドバンテージとなるといえるでしょう。
おわりに
学芸員の仕事や学芸員課程の学びについて理解できたでしょうか。皇學館大学では博物館学芸員のみならずいろいろな学びを得ることができ、様々な資格取得が可能です。まずはオープンキャンパスに足を運び、皇學館大学について詳しく知ってみてはいかがでしょうか。