未来を拓くイノベーション人材って?文理を超えて宇宙を学ぶ面白さ

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はじめに

これからのイノベーションや社会課題解決には、分野を超えた柔軟な視点をもつ人材が強く求められています。そのために、大学の4年間で多様な興味や価値観を持つ人と学び合い、視野を広げる経験はとても大切。

そこで今回は、学習院大学で「宇宙ルール形成に着目した文理融合×産官学連携による人材創造プログラム」を実施する理学部物理学科の渡邉匡人教授と、法学部法学科の小塚荘一郎教授にお話を聞きました。

文理融合で宇宙を考える魅力的なプログラム

――学習院大学のプログラムは文部科学省の「人文社会×宇宙」分野越境人材創造プログラムにも採択され、大きな期待を寄せられていますね。

渡邉:「月の資源の所有権って?」「宇宙でどんなビジネスができる?」「宇宙を活用した地域おこしは可能?」など、今、“宇宙”は理系のものだけではなくなってきています。よりよい宇宙利用のために、多様な分野からのアプローチが求められています。

本学では以前から、「文理融合×産学官連携による人材創造プログラム」を実施していました。法学部の小塚(荘一郎)先生が宇宙法、国際社会科学部の乾(友彦)先生が宇宙ビジネス、国際宇宙ステーションでの実験を行ってきた物理学科の私が宇宙利用の可能性を追究する領域を担当し、さまざまな視点から議論します。こうして分野横断的に学べるのが本プログラムの特徴です。

これまで、宇宙開発は国やJAXAなど公的機関が主導してきましたが、現在は民間企業がどんどん進出しています。ベンチャー企業の資金調達や宇宙環境の保全といった今までにない課題が次々に出現し、倫理や平和利用など従来の問題とともに解決していかなければなりません。しかし、それは同時にイノベーションの大きなチャンスです。それを教員も学生も一緒になって、実践的に学ぼうとしています。

理学部 渡邉匡人教授

小塚:来年度からは文理融合の全学共通科目「宇宙利用論」をスタートします。
日本の宇宙ベンチャー企業Space BDの方のリアルな話、JAXAで日米交渉を担ってきた方の経験談など、学問の場だけでない多くの実務者を招き、進化する宇宙利用を体感してもらいたいと考えています。多様な視点から宇宙を考え、意見を交わす授業にしていきます。

また、私が専門とする宇宙法の分野では、2年連続で学習院大学を会場に「宇宙法模擬裁判大会アジア地区予選」を開催します。中韓、インドなどのトップレベルの学生たちが参加し、熱い議論を繰り広げます。学習院大学の学生たちにも、大いに刺激を受けてほしいですね。

――“文理融合で学ぶ”とはどんなことか具体的に教えてください。

小塚:このプロジェクトのきっかけは、渡邉先生から私に「月の地下資源を民間企業が掘り出して、販売することは合法なのか」と問合せがあったことでした。
以前、月の土地を売る米国の会社が話題になりましたが、実はあの事業は違法とされています。月は「誰のものでもない土地」だということについては既に「法」があるのですね。かつて世界中に植民地が作られた歴史から、同じ過ちで平和を損なうまいという反省が込められています。

対して、月から氷や砂などの資源を取り出して取引することは適法だとされています。これについては、月の資源を採掘した民間企業があれば、その企業の所有物になるという法律が米国と日本にはあります。
実際に、日本のベンチャー企業が米国のNASAに月の砂を売るという契約が結ばれていますが、これは、両国の法律に照らして適法だと言えそうです。
こういう法律がある国は世界でまだ少数ですが、日本の法律も含めて国際社会から非難されているということはありません。ここには、月面の砂を利用するだけなら、月に植民地を作ることにはならないのではないかという考えがあります。これは法制度のさらに背景を説明したものと言えます。

人文社会の面白いところは、いろんなレベルで宇宙について議論ができることだと思います。そしてこのように、理工学的な科学技術の可能性と人文社会的な観点とを掛け合わせることが、新たな領域を社会に役立てるためにとても重要なのです。

法学部 小塚荘一郎教授

渡邉:従来の理工系人材は、技術開発のみに集中しすぎてきた部分があるように思います。宇宙領域ひとつをとっても、高度な技術を開発するだけではなく、それを何を目的にどう活用できるか、どうビジネスにするか、どう消費者に、世界の人びとに役立っていくのか、という視点が必要です。
理系・文系問わず、これを身につけられることが“文理融合で学ぶ”意義でしょう。学習院大学での学びを経て、たとえば宇宙ベンチャーや宇宙に関わる事業に携わろう、自ら行動してみようと踏み出せるような人材に育ってほしいと考えています。

――関心を持つ高校生にメッセージをお願いします。

渡邉:宇宙での出来事は決して他人事ではありません。若い皆さんの将来ではさらにそうでしょう。宇宙について興味を持ったら、自分ならどうするか、未来のためにどうなっていくことが必要か、を自分事として考えてほしいと思います。
何も「宇宙」だけに限らず、興味を持ったことに自ら「こうしたい」という気持ちを持ち、挑戦してみることが大切。本プログラムでも、ただ知識を得るだけでなく、自分から学ぶ姿勢を重視しています。そうした好奇心を持った方はぜひ一緒に学びましょう。

小塚:現在起きていることをまず自分のこととして受け止めて、考える。そして、何かアクションにつなげるということを大事にしてほしいと思っています。
本プログラムは、産学連携(企業と大学が協力して研究や教育を進めること)も非常に重視しています。宇宙ベンチャー企業でのインターンシップも実施しており、より現場での実践に近いアクティブな経験を積むことができます。文理融合・産学連携という、まさに「分野越境」の取り組みを楽しめる皆さんに興味を持っていただけると嬉しいです。

渡邉研究室

目白の杜の〈知〉のコミュニティ

学習院大学は5学部約9,000人の学生がワンキャンパスで学びます。学生と教員の距離が近く、約70%の授業が30名以下の少人数教育。ディスカッションやプレゼンテーションで主体的な姿勢が身につきます。

また、学部・学科に関わらず、バラエティ豊かな「全学共通科目」を設置。ワンキャンパスを活かした分野を越えた学びで、広い視野と行動力を身につけられます。

こうした授業を担当する教授陣の質の高さも特長です。国の「科学研究費助成事業」の採択率は2年連続で全国私立大学1位(2021・2022年度新規課題)。「Nature Index 2018 Japan」では高品質な科学論文を出版した割合が日本の学術機関中1位にランキングされるなど、最先端の学問に触れられます。

これからの時代に求められる人を育てる学習院大学。詳しく知りたい人は、以下の「受験生サイト・資料請求サイト」が役立ちます。
また2023年4月には新校舎(新東1号館)も完成。きれいなキャンパスを見学するのもおすすめです。

この記事を書いた人
    【PR】Studyplus編集部
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