はじめに
日ごろの生活や学びの中で、「こんなサービスがあったら便利なのに」と感じたことはありませんか?アントレプレナー(起業家)とは、そんな身近な気づきから新しい価値を生み出し、ビジネスを通じて社会の課題を解決していく人のことです。
今、多くの学問領域を横断して学べるアントレプレナー育成プログラムが注目されています。さらに将来的には、起業家精神と実践力を一層高めるための専門的な教育環境も整備されつつあります。
今回、大学で学びつつ、実際に起業まで実現した現役大学生にインタビューすることができました。これからの社会を変えていく挑戦の話をお届けします。
起業によって社会によい影響をもたらしたい
京都産業大学 現代社会学部 現代社会学科 御前さん
──起業に興味を持ったきっかけを教えてください。
もともとは美容師志望でした。でも高2になって周りが進路選択に悩んでいる頃、僕も「自分が本当にしたいことって何だろう」と考え始めて。美容師は今でもやりたい職業のひとつですが、それ以上に「自分がリーダーシップを発揮することで社会に新たな価値をもたらせたら」という思いが芽生え、アントレプレナー(起業家)を志しました。
──その中で、京都産業大学に進学した理由を教えてください。
通っていた塾の学生メンターが京産生で、その方から所属学部を問わず学べる「アントレプレナー育成プログラム」の存在を教えてもらいました。事業やビジネスを始めるにしても、何をすればよいかまったく分からない。でも起業にまつわるカリキュラムを専門的に学べたら、自身の栄養になると考えました。
加えて学部によってキャンパスが分かれておらず「ワンキャンパス」であることも、起業するにはよい環境だと感じました。京都・上賀茂に10以上の学部や大学院の機能が集まって、多様な価値観を持つ学生と幅広い交流が期待できるのかなって。
──現代社会学部を選んだ背景を教えてください。
起業して社会によい影響をもたらすには、悩みや課題を解決することが必要不可欠。なので現代の日本社会が抱える問題をいろんな視点から考察できたら、と思いました。ビジネスアイディアの種になることを期待しました。
授業の空きコマに、ビジネスチャンス到来!
──現在「あきコマ」という事業を考案し、10近いビジネスコンテストで優勝されています。どんなサービスでしょうか?
他社さんの名前を出すのはどうだろう、と思いつつ……わかりやすいので「タイミーさんの就活版」と説明しています。「スキマ時間」で企業説明会に参加したら「報酬」がもらえる。「優良企業」しか載せていないこともポイントのひとつです。
──どういった発想で「あきコマ」に辿り着いたのでしょうか?
学生って案外忙しいですよね。いま70%くらいの学生は時間が合わず、企業説明会に参加できていないという課題があります。そこで授業の空きコマに限らず、暇を持て余す「スキマ時間」にビジネスチャンスがあると考えました。しかし、現在PoC(実証実験)を進める中で、多くの課題に直面しています。一週間に数回のペースで事業内容のピボットを行い、試行錯誤を重ねています。どうすれば学生に「参加したい」と思ってもらえるか、その最適な形を探っているところです。いずれにせよ、学生に参加したいと感じてもらえる形を探っています。
「優良企業」しか載せないのは、企業さんへの想いですね。ヒアリングする中で、世の中には魅力的な企業が数多く存在することを知りました。でも認知度が低く採用にかけられる費用が少ないがゆえ、学生にその魅力を伝えきれていない現状がある。この機会損失が本当にもったいないと歯がゆく感じ、優良企業にもっと光が当たるサービスにできたらいいな、と着想しました。
──「あきコマ」のどんな点が評価されている、と感じていますか?
ありそうでなかった「新規性」と、採用市場の大きさから「成長性」があると、審査員を務めるVC(ベンチャーキャピタル)の方々からよくフィードバックいただきます。
多くの学生や企業の方が、「あきコマ」のようなスキマ時間を活用した就活サービスのアイデアを一度は考えたことがあるのではないかと思います。実際に、私自身もそういった話を多くの方から伺ってきました。
しかし、それを実際に行動に移し、形にしている点は、自分の強みであると感じています。
起業家であれば行動力は当然とも言えるかもしれませんが、それでも動き続ける姿勢や、少し自分で言うのも気が引けますが、起業家としての熱量のようなものも、評価していただけているのではないかと思っています。
「Innovationラボ」での出会いがビジネスを加速させる
──そんな評価を得るまでに、御前さんは大学のどんな環境を活用されましたか?
起業やプロジェクトなど「何かやってみたい」という人が学内外から集まる、4号館の「Innovationラボ」に通っています。毎週木曜がオープンデイで、誰でも自由に出入り可能。ここに起業家の“先輩”が外部から来て相談に乗ってくれるんです。
休学してビジネスに邁進している人も訪れるので、意見交換していると刺激になってモチベーションが上がる。僕も木曜はあえて“空きコマ”にして、Innovationラボに顔を出してはこうしたメンターさんと壁打ちを繰り返しています。
──Innovationラボに通って事業を加速させたエピソードを教えてください。
Innovationセンターの職員の方には、就活イベントの実施にあたり、チラシの作成や集客、企画内容に関する助言など、さまざまな面で協力いただいており、大変助かっています。
ありがたいことに、「あきコマ」の登録者数は開始から三週間で100名を突破しました。
このように順調に進められているのも、Innovationセンターの皆様のご支援があってこそだと実感しています。
京産って産学連携がよく行われているんですね。普段から関わってくださっている企業にメールを送った時は返信率が高かった印象があります。あと開催されるビジコンの数が他大学より多く、賞金額も大きい。そうした環境が広がっているのは、京産でアントレプレナーシップを学ぶ魅力のひとつですよね。
──今後の目標を教えてください。
短期的な目標は、7月に控える「IVS(Infinity Ventures Summit:日本最大級のスタートアップカンファレンス)」での優勝と、大阪・関西万博で行われる「Youth Innovation EXPO」国際大会でのピッチです。ここで説得力あるプレゼンをするためにも実績を積み上げたい。
ただ、ビジコン優勝がゴールになっては本末転倒。長期的には、「あきコマ」をLINEアプリのように多くのスマホユーザーに浸透させることが目標です。大学生は入学したら「あきコマ」に登録するのが当たり前、というサービスに成長させたいですね。
おわりに
文理10学部、15,000人の学生が集まる京都産業大学では、学部の枠を超え、多様な人との出会いがあります。「ONLY ONE CAMPUS」というスローガンのもと、広大なキャンパスに全学部を集結する“一拠点総合大学”という利点を活かし、全学部・全年次の学生が誰でも学べるアントレプレナー育成プログラムには、教員もすべての学部から集い、文理を超えた新しい学びが展開されます。チャレンジすることの大切さを講義・演習・実践を通じて学びましょう。実務経験のある教員や起業経験のある卒業生がキャンパスや学外拠点でみなさんをサポートします。また、新学部に相当する「アントレプレナーシップ学環(仮称・設置申請中)」を2026年に設置予定。アイディアを形にする取り組みやビジネスコンテスト出場など、教室を飛び出して挑戦し続ける環境がいま以上に広がる予定です。
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