はじめに
ゼミ(ゼミナール)は、学生が主役となって取り組んでいく少人数制の演習型授業のことです。多くの場合、専門課程に進んだ3年次以降に所属するいわゆる「卒業論文ゼミ(卒論ゼミ)」を指しますが、1、2年次から設置されるケースも増えています。特定の専門分野について少人数の学生で発表やディスカッションなどを行いながら、教員とともに学びを深めていく大学ならではの学びのスタイルですが、今回、ゼミでの学びに力を入れていることで知られる東京女子大学を例に、ゼミの雰囲気や学べる内容、活動を通じてどのように成長できるかを紹介します。人文学科歴史文化専攻教授の柳原伸洋先生と、同学科専攻4年の平田恵莉奈さんにご協力いただきました。
自分の意見を自由に言える環境が整っているのが東京女子大学のゼミ

――東京女子大学のゼミの特徴を教えてください。
平田さん:高校まで授業では基本的に受け身でしたが、大学のゼミは自分の意見を述べるスタイルで進められます。最初は少し戸惑いもありましたが、多様な意見を受けながら物事の見方を工夫することで、新たな意味を見出したり理解を深めたりする過程が面白いと感じています。
また、ゼミでは学生たちがそれぞれの発表を行いますが、先生からは「自分だったらどうするか」を考えて発言や指摘をしてほしいとよく言われます。それを受け、ゼミの活動中は常に自分の頭で考えることを意識しています。
柳原先生:東京女子大学は1年次前期から演習科目を必修としており、学生一人ひとりの主体性を引き出す学びの環境を備えています。アクティブラーニング形式の授業が全授業の半数以上(2024年度74.4%)。徹底した少人数教育を行っており、ゼミは東京女子大学の教育の根幹といえます。
ゼミは「自分が知らないという状況を認識して、次の知へとつなげていく」ためにあります。「学問」とは、間違いを恐れずに「学び」、そこからさらに「問い」を生み出していく循環だとも言えます。そこで、ゼミでは「質問・意見を出しやすい雰囲気」を作り、学生個人の自分からのチャレンジを大切にすることを意識しています。さらに、現代社会を生き抜くための情報リテラシー能力を養うため、教員が提供する情報も自分で取捨選択して、自身の研究に取り入れていく「知」の技法を身につけてもらいたいです。
ゼミごとに雰囲気は異なるので一概にはいえませんが、ときには学生たち同士で話し合って課外活動や調査を行うこともあります。どのゼミも学生の主体的な実践を大切にしており、女子大でもあるので、学生がゼミ経験を通じて日本社会で活躍できる主体性を培うことも重視しています。
平田さん:高校まで授業では基本的に受け身でしたが、大学のゼミは自分の意見を述べるスタイルで進められます。最初は少し戸惑いもありましたが、多様な意見を受けながら物事の見方を工夫することで、新たな意味を見出したり理解を深めたりする過程が面白いと感じています。
また、ゼミでは学生たちがそれぞれの発表を行いますが、先生からは「自分だったらどうするか」を考えて発言や指摘をしてほしいとよく言われます。それを受け、ゼミの活動中は常に自分の頭で考えることを意識しています。
柳原先生:東京女子大学は1年次前期から演習科目を必修としており、学生一人ひとりの主体性を引き出す学びの環境を備えています。アクティブラーニング形式の授業が全授業の半数以上(2024年度74.4%)。徹底した少人数教育を行っており、ゼミは東京女子大学の教育の根幹といえます。
ゼミは「自分が知らないという状況を認識して、次の知へとつなげていく」ためにあります。「学問」とは、間違いを恐れずに「学び」、そこからさらに「問い」を生み出していく循環だとも言えます。そこで、ゼミでは「質問・意見を出しやすい雰囲気」を作り、学生個人の自分からのチャレンジを大切にすることを意識しています。さらに、現代社会を生き抜くための情報リテラシー能力を養うため、教員が提供する情報も自分で取捨選択して、自身の研究に取り入れていく「知」の技法を身につけてもらいたいです。
ゼミごとに雰囲気は異なるので一概にはいえませんが、ときには学生たち同士で話し合って課外活動や調査を行うこともあります。どのゼミも学生の主体的な実践を大切にしており、女子大でもあるので、学生がゼミ経験を通じて日本社会で活躍できる主体性を培うことも重視しています。

――ゼミの雰囲気を教えてください。また、その魅力はどんな部分でしょうか?
平田さん:発言することが苦手な人でも、ゼミなら積極的に意見しようと思える雰囲気があります。議論が白熱することもありますが、“ゼミ”という空間での出来事だとみんな理解しているので、授業が終わればすぐに和やかな関係に戻ります。少人数だと気心が知れるというか、お互い真剣に意見をぶつけ合うことをくり返していくうちに、他にはない特別な絆も生まれる気がします。
柳原先生:ゼミ仲間の意見を聞きながら、自分の思考を発展させるスキルが身につく。各分野の専門家から最先端の知識を学べる。こういった側面もありますが、「自分」をもって社会を生きていく力、そして「自分」をもって自分自身の人生を生きるスキルを身につけられるのが一番の魅力だと思います。
さらに、ゼミは同級生・家族・バイトやサークルとは異なるコミュニティです。ゼミ生同士は「仲良し」になってもいいのですが、それが主目的ではなく、「研究を通じた関係」を生み出すことが目的です。在学中はもちろん卒業後も機能する、人生にとってかけがえのない「サードプレイス」となり得ることも魅力だと思います。だから、ゼミ同窓会もありますし、大学に卒業生がよく訪ねて来てくれます。
平田さん:発言することが苦手な人でも、ゼミなら積極的に意見しようと思える雰囲気があります。議論が白熱することもありますが、“ゼミ”という空間での出来事だとみんな理解しているので、授業が終わればすぐに和やかな関係に戻ります。少人数だと気心が知れるというか、お互い真剣に意見をぶつけ合うことをくり返していくうちに、他にはない特別な絆も生まれる気がします。
柳原先生:ゼミ仲間の意見を聞きながら、自分の思考を発展させるスキルが身につく。各分野の専門家から最先端の知識を学べる。こういった側面もありますが、「自分」をもって社会を生きていく力、そして「自分」をもって自分自身の人生を生きるスキルを身につけられるのが一番の魅力だと思います。
さらに、ゼミは同級生・家族・バイトやサークルとは異なるコミュニティです。ゼミ生同士は「仲良し」になってもいいのですが、それが主目的ではなく、「研究を通じた関係」を生み出すことが目的です。在学中はもちろん卒業後も機能する、人生にとってかけがえのない「サードプレイス」となり得ることも魅力だと思います。だから、ゼミ同窓会もありますし、大学に卒業生がよく訪ねて来てくれます。
ゼミを通じて「知ること」で、自分の世界は確実に広がっていく

――具体的に、どういったゼミがあるのでしょうか?
柳原先生:私の担当ゼミの一つが「文献・資料演習(西洋近現代)」(※2025年度より「歴史文化演習」に改名)です。2・3年生が参加する学年横断的なゼミで、研究文献の精読を通じて、本格的な研究のための基礎知識と情報収集の技能を身につけていきます。2年生にとっては、3年次からの卒論ゼミを決めるための「お試しゼミ」であり、3年生の背中を見ながら学びを深めていきます。一方、すでに卒業論文ゼミを決めている3年生にとっては、自分の専門分野をさらに深め、他の分野を知ることが目的になります。また、教員をめざしている学生が、歴史全般の専門知識を身につけるために履修することもあります。昨年度のこのゼミには平田さんが参加していました。
――ゼミをきっかけに、自身の学びが広がったと感じたことはありますか?
平田さん:「文献・資料演習(西洋近現代)」では、3年生が2年生を指導しながら一緒にレジュメを作りますが、それは自分が学んでいく上で良い刺激になりましたし、質問をもらうことで新たな気付きを得られました。共同で行わなければ得られない新たな発見や学びがたくさんあったと感じます。
自身の卒論ゼミにあたる「歴史文化演習(西洋近世史)」でも、自分が思いつかなかった着眼点や疑問点、より良い史料を他のゼミ生から挙げてもらうことで、新たな方向性を得られました。私は卒論で19世紀イギリス王室のヴィクトリア女王・アルバート公夫妻について書く予定です。ゼミでの学びを広げる中でこの二人を取り上げたいと考えたものの、夫妻に関する資料が少なく、当初はヴィクトリア女王単体で書くべきか悩んでいました。それを助けてくれたのもゼミの仲間でした。アルバート公を取り上げるか悩んでいることを私の卒論構想の発表中に知ったゼミ生の1人が、夫妻に関する資料を多数掲載しているBBCのウェブサイトを教えてくれました。このことをきっかけに、ようやく卒論の方針を決めることができました。
――ゼミでの活動を通じて、どのような力が身につくことを期待していますか?
柳原先生:人間はどうしても「自分」という枠組みの限界を決めがちです。ゼミでの活動を通じて、その枠組みの外に出ていく力を身につけていくことを期待しています。
歴史文化専攻では、ゼミの延長としてドイツ・ヨーロッパ研修を実施しています。この研修は、旅先で得た知見を自身の研究に重ねてもらうことはもちろん、旅を通して生まれる「次はまた別の場所に行ってみたい」という「自分の限界を超えた場所を知りたい」という感情の喚起も狙いのひとつです。旅先で体験する「未知」との遭遇は、「学べば問いが出て、問いが出れば学ぶ」という循環、つまり「学問」であり、ゼミでの活動とまったく同じ構造を持ちます。こうした様々な活動を通じて、自分で決めた枠組みの外に出ていく力を培ってほしいと思います。
柳原先生:私の担当ゼミの一つが「文献・資料演習(西洋近現代)」(※2025年度より「歴史文化演習」に改名)です。2・3年生が参加する学年横断的なゼミで、研究文献の精読を通じて、本格的な研究のための基礎知識と情報収集の技能を身につけていきます。2年生にとっては、3年次からの卒論ゼミを決めるための「お試しゼミ」であり、3年生の背中を見ながら学びを深めていきます。一方、すでに卒業論文ゼミを決めている3年生にとっては、自分の専門分野をさらに深め、他の分野を知ることが目的になります。また、教員をめざしている学生が、歴史全般の専門知識を身につけるために履修することもあります。昨年度のこのゼミには平田さんが参加していました。
――ゼミをきっかけに、自身の学びが広がったと感じたことはありますか?
平田さん:「文献・資料演習(西洋近現代)」では、3年生が2年生を指導しながら一緒にレジュメを作りますが、それは自分が学んでいく上で良い刺激になりましたし、質問をもらうことで新たな気付きを得られました。共同で行わなければ得られない新たな発見や学びがたくさんあったと感じます。
自身の卒論ゼミにあたる「歴史文化演習(西洋近世史)」でも、自分が思いつかなかった着眼点や疑問点、より良い史料を他のゼミ生から挙げてもらうことで、新たな方向性を得られました。私は卒論で19世紀イギリス王室のヴィクトリア女王・アルバート公夫妻について書く予定です。ゼミでの学びを広げる中でこの二人を取り上げたいと考えたものの、夫妻に関する資料が少なく、当初はヴィクトリア女王単体で書くべきか悩んでいました。それを助けてくれたのもゼミの仲間でした。アルバート公を取り上げるか悩んでいることを私の卒論構想の発表中に知ったゼミ生の1人が、夫妻に関する資料を多数掲載しているBBCのウェブサイトを教えてくれました。このことをきっかけに、ようやく卒論の方針を決めることができました。
――ゼミでの活動を通じて、どのような力が身につくことを期待していますか?
柳原先生:人間はどうしても「自分」という枠組みの限界を決めがちです。ゼミでの活動を通じて、その枠組みの外に出ていく力を身につけていくことを期待しています。
歴史文化専攻では、ゼミの延長としてドイツ・ヨーロッパ研修を実施しています。この研修は、旅先で得た知見を自身の研究に重ねてもらうことはもちろん、旅を通して生まれる「次はまた別の場所に行ってみたい」という「自分の限界を超えた場所を知りたい」という感情の喚起も狙いのひとつです。旅先で体験する「未知」との遭遇は、「学べば問いが出て、問いが出れば学ぶ」という循環、つまり「学問」であり、ゼミでの活動とまったく同じ構造を持ちます。こうした様々な活動を通じて、自分で決めた枠組みの外に出ていく力を培ってほしいと思います。

――ゼミでの活動を通じて、どんな部分が成長したと感じていますか?
平田さん:歴史を多角的に問い直す力が身につきました。また、日頃から意見を述べたり自身の頭で考えることを習慣化できています。
私はドイツ・ヨーロッパ研修を通じて、自身の学びを深めるとともに人間的にも成長できたと思います。写真では目にしたことのある歴史的建造物や街並みも、実際に自分の目で見ることによって、新たな観点や疑問点を得ることができました。海外の街に1週間ほど滞在したことで、現地の文化や日本の独自性、そして自分自身の視野が広がったと感じています。柳原先生が「次はそこに行きたい」という「不足」の感情をもってもらうことも研修の狙いとおっしゃっている通り、私も再度ヨーロッパに行って新しい体験をしたいというモチベーションが生まれました。
――最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。
柳原先生:「知ること」は確実に世界を広げてくれる行為です。ただし、インターネット上で見たいものだけを確認するかのように知り、「オススメ」に従って世界が展開していくだけでは、同じ箇所でぐるぐるまわっている可能性もあります。一方、他者との関わりのなかで密度の濃い体験を伴いながら「知る」大学のゼミや研修には圧倒的な情報量があり、インターネット社会だからこそ、逆にそういうものの価値が高まっています。高校生の皆さんも、そうした本当にかけがいのない体験を、東京女子大学のゼミに入ってぜひ味わってみてください。
平田さん:高校生の皆さんは、今勉強していることが役に立つのかわからず、大学受験のためだけに勉強していると感じている人も少なくないかと思いますが、学んだ知識は、皆さんの世界を広げることにつながっています。大学での学びの基礎となったり、海外旅行で目にした歴史的建造物をより深く楽しむことができたりと、大学以外での生活まで豊かにしてくれます。私は、東京女子大学に入学してみることでそれをしっかり感じていますので、皆さんもぜひ頑張ってください。
平田さん:歴史を多角的に問い直す力が身につきました。また、日頃から意見を述べたり自身の頭で考えることを習慣化できています。
私はドイツ・ヨーロッパ研修を通じて、自身の学びを深めるとともに人間的にも成長できたと思います。写真では目にしたことのある歴史的建造物や街並みも、実際に自分の目で見ることによって、新たな観点や疑問点を得ることができました。海外の街に1週間ほど滞在したことで、現地の文化や日本の独自性、そして自分自身の視野が広がったと感じています。柳原先生が「次はそこに行きたい」という「不足」の感情をもってもらうことも研修の狙いとおっしゃっている通り、私も再度ヨーロッパに行って新しい体験をしたいというモチベーションが生まれました。
――最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。
柳原先生:「知ること」は確実に世界を広げてくれる行為です。ただし、インターネット上で見たいものだけを確認するかのように知り、「オススメ」に従って世界が展開していくだけでは、同じ箇所でぐるぐるまわっている可能性もあります。一方、他者との関わりのなかで密度の濃い体験を伴いながら「知る」大学のゼミや研修には圧倒的な情報量があり、インターネット社会だからこそ、逆にそういうものの価値が高まっています。高校生の皆さんも、そうした本当にかけがいのない体験を、東京女子大学のゼミに入ってぜひ味わってみてください。
平田さん:高校生の皆さんは、今勉強していることが役に立つのかわからず、大学受験のためだけに勉強していると感じている人も少なくないかと思いますが、学んだ知識は、皆さんの世界を広げることにつながっています。大学での学びの基礎となったり、海外旅行で目にした歴史的建造物をより深く楽しむことができたりと、大学以外での生活まで豊かにしてくれます。私は、東京女子大学に入学してみることでそれをしっかり感じていますので、皆さんもぜひ頑張ってください。
おわりに

柳原先生と平田さんのお話はいかがでしたでしょうか?
お二人のお話を聞いて、東京女子大学のゼミの活動に興味をもったという方は、模擬授業が開催されるオープンキャンパスへの参加をおすすめします。開催日程は2025年7月6日(日)、8月2日(土)・3日(日)、2026年3月21日(土)。申込受付開始は開催日のおよそ3週間前で、大学公式LINEアカウントを友達登録しておくと、申込開始のタイミングでお知らせが届きます。詳しい情報に関しては下記のサイトに掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
お二人のお話を聞いて、東京女子大学のゼミの活動に興味をもったという方は、模擬授業が開催されるオープンキャンパスへの参加をおすすめします。開催日程は2025年7月6日(日)、8月2日(土)・3日(日)、2026年3月21日(土)。申込受付開始は開催日のおよそ3週間前で、大学公式LINEアカウントを友達登録しておくと、申込開始のタイミングでお知らせが届きます。詳しい情報に関しては下記のサイトに掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。



