祇園祭を支える大学生 ―体験が、学びに変わる。

はじめに

将来やりたいことが曖昧で、志望校を決められずにいた高校時代。そんな中、母と一緒に集め始めた神社の御朱印をきっかけに「京都の伝統文化なら興味をもって学べるかも」と進学の一歩を踏み出しました。
彼女の琴線に触れたのは、京都における夏の風物詩で日本三大祭りのひとつに数えられる「祇園祭」。担い手の少なくなった山鉾(やまほこ)のひとつ「函谷鉾(かんこぼこ)」の運営を支援するゼミ活動を通じて、観光業のおもしろさ・やりがいに目覚めていきます。今回は、京都という街を舞台に伝統文化を学ぶ学生へのインタビューです。

伝統文化を深掘りできる環境に惹かれて

京都産業大学 文化学部 京都文化学科 観光文化コース
中嶋 優理さん

──大学で伝統文化や観光を学ぼうと思った理由を教えてください。

私は高校生の時に将来進みたい方向性がなかなか定まらず、志望校の選定に苦戦しました。そんなとき、進路資料室で見つけた大学パンフレットの中に、祇園祭の「函谷鉾」の運営をサポートしているゼミの紹介ページが目に留まって。それが京都産業大学 文化学部 京都文化学科で指導されている、小林一彦先生のゼミでした。

母と一緒にいろんな神社仏閣の御朱印を集めていたこともあり、そこから派生して伝統文化に自然と目が向いたのかもしれません。

──大阪から通学されているとのことですが、京都産業大学を選んだ理由を教えてください。

私のように将来の方向性がはっきりしていない人にとって、文理10学部が集まる「ワンキャンパス」で多様な学問に触れられる環境は、とても魅力的でした。実際に学びながら気づきが得られることもあるんじゃないかな、と。
あとは何より「函谷鉾」の運営サポートに携われる点も大きなポイントでした。祇園祭当日には観光客の方々と直接関わる機会もあり、実践的なフィールドワークとして貴重な経験が積めると思い、京都産業大学を選びました。

祇園祭「函谷鉾」の運営サポートを通じて得られる学びとは

──小林ゼミの活動内容を教えてください。

祇園祭最大の見どころといえば、各町に伝わる山鉾が中心街の四条通を進む「山鉾巡行」です。そのひとつに名を連ねる「函谷鉾」は、スタッフの高齢化にともなう担い手不足が大きな悩み。そこで、小林ゼミは運営母体の函谷鉾保存会と協働し、伝統文化の継承にあたっています。

活動内容のひとつとして、観光客の方々がお買い求めくださる授与品の企画・開発・製造。ゼミの中で開催されるコンペでは学生視点のアイディアが発表され、定番のちまきや手拭いとはひと味異なる品が採用されます。どんな品があったら喜んでくださるかな、というイメージを形にする過程に学びがあるんですよね。

さらに鉾建て職人さんのサポート、試運転の「曳き初め」を行い、祇園祭当日は数十万人といわれる来場者の交通整理や授与品の物販に奮闘します。特に山鉾巡行前の宵々山や宵山では、函谷鉾の前を行き交う人混みの熱狂がすさまじく、炎天下の中、熱中症対策なども含め、現地の安全を守ることに努めています。

──函谷鉾の運営活動を通じて得たことは何ですか?

来場者の期待や不安を“先回り”して対策する重要性を学びました。実行までさまざまなアングルから物ごとを考えるようになって、高校生の時より確実に視野は広がったと感じています。

また、与えられた役割をまっとうし、チームとして成果を上げる経験を通じて、協働の大切さも学びました。学年が上がるにつれて後輩が増えるので、今後はリーダーとしての役割も果たしていきたいと思っています。

京都で人の笑顔に接する仕事に就けたら

──文化学部での勉強やゼミ活動を経て、進みたい道は見えてきましたか?

函谷鉾の運営サポートでいろんな立場の方と触れ合ったこともあって、「人の笑顔に直接触れられる仕事」がいいな、と思い始めました。京都へお越しになった方に安らぎの場を提供するホテルスタッフや、観光に寄与する伝統的な産業など、人と関わる現場で働きたいと思うようになりました。

──気になる伝統的な産業はありますか?

授業で取り上げられた着物や和服の世界に魅せられています。祇園四条にある老舗呉服店「ゑり善」さんの店頭に飾られている表(おもて)がすごくキレイで通りかかるたびに見入ってしまうんです。どのような形で関わるか具体的なイメージはまだついていませんが、そういった方面に興味を覚えるようになりました。

おわりに

ゼミ活動を通じて祇園祭「函谷鉾」の運営支援という貴重な経験を積んだ中嶋さん。観光業に携わる将来像を描き始めた背景には、産学連携が盛んで京都のあらゆる人脈と繋がっている京都産業大学の環境だからこそ、その境地に達することができたのではないでしょうか。

彼女が在籍する文化学部は、2026年4月にリニューアルを予定。文化構想学科、京都文化学科、文化観光学科の3学科体制となり、いずれも「フィールド演習」という実践的な学びや活動を通じて、さらなる人材育成に邁進します。

今回の記事をきっかけに、京都という街で、文化を学び、人とつながり、未来を描く。そんな学びに興味を持った方は、下記Webサイトをぜひチェックしてみてください。

この記事を書いた人
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