モチベーションが上がる名言【第六回】〜シェイクスピアの言葉〜

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はじめに

16世紀末から17世紀初めに、イギリスの文学、演劇界に旋風を巻き起こしたシェイクスピア。戯曲は今も世界中で上演され、最も優れた英文学者と言われています。

モチベーションアップにはピッタリの名言

成し遂げんとした志をただ一回の敗北によって捨ててはいけない

(引用元:――ウィリアム・シェイクスピア(劇作家・詩人))


シェイクスピアの作品は卓越した人間観察力と、その心理描写の豊かさにあります。
四大悲劇と呼ばれる『ハムレット』、『マクベス』、『オセロ』、『リア王』のほか、『ロミオとジュリエット』、『ヴェニスの商人』など、誰もが一度は耳にしたことのある数々の傑作をおよそ20年の間に発表しており、当時ヨーロッパ最大の都市であったロンドンの人々を熱狂させました。

今回ご紹介する名言は、「テンペスト」(原題:The Tempest)という戯曲の第3幕第3場にあるセリフです。
「テンペスト」は、シェイクスピアが一人で書いた戯曲としては、最後の作品と言われています。
日本では「あらし」、「大嵐」などの題名で、大正時代から多くの翻訳が発表されています。

この名言の意味は、受験生にとって、とてもわかりやすいものでしょう。
志望校を目指して勉強を続ける日々の途中には、模試の結果が良くなかったり、単語や公式をなかなか覚えられなかったりと、挫折を感じることもあるはずです。
だからと言ってあきらめず、何度もその「志」に向かってやり直せ、とシェイクスピアは言っています。
モチベーションアップにはピッタリの名言といえます。

ただし、このセリフの劇中での使われ方は、実はちょっと趣きが違うのです。
「テンペスト」を読んだことのない皆さんのために少し解説します。

シェイクスピアの作品は、言語学でも貴重な資料


「テンペスト」(tempest)は、先に紹介した邦題にもあるように、大嵐、暴風雨といった意味の英単語です。

劇の冒頭、船が嵐に遭い、絶海の孤島に漂着します。乗船していて助かったのは、ナポリ王・アロンゾ、ミラノ大公・アントーニオ、ナポリ王の弟・セバスティアンらでした。
この時、ナポリ王子は行方不明で、父アロンゾは息子を失ったと嘆いています。

アントーニオは、「王子亡き今、アロンゾを殺せば、ナポリ王になれるぞ」とセバスティアンをそそのかします。
セバスティアンもその気になり、兄アロンゾを殺害しようとします。

しかし1度目は失敗してしまい、2度目の機会が訪れた時、アントーニオがセバスティアンにかけた言葉が、今回のセリフです。

つまりセバスティアンが兄を殺そうとしたことが、ここでの「志」の正体というわけです。

シェイクスピアの作品は、死後わずか7年で、ほぼすべての戯曲が喜劇、史劇、悲劇に分類され、出版されました。
その後も世界各地で翻訳出版がされ、日本にも江戸時代にはその名が伝わっています。

現在、インターネットで公開されている名言部分の原文は次の通りです。

Do not, for one repulse, forego the purpose
That you resolved to effect



ここには、現在の英語では見られない文法や単語が含まれています。
シェイクスピアの残した傑作の数々は、初期近代英語と呼ばれる15世紀半ばから17世紀半ばに使われていた言語を知る、研究上の貴重な資料ともなっているのです。

ちなみに、大正4年(1915)発行の坪内逍遥訳「テムペスト」で、このセリフは次のように書かれています。

一度やりぞこなつたからといつて、一旦決心なすつたことをお止めなすっちやいけませんよ。


坪内逍遥は、半生をかけてシェイクスピアの全作品翻訳という偉業を達成しました。
彼の心の中にもセリフのような「決心」があったのかもしれません。
他にも国内では多くの英文学者が、シェイクスピア作品の翻訳を試みています。

英文学科を目指している受験生は、シェイクスピアの全作品翻訳を「志」にしてみてはいかがでしょうか?


ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)
英文学史上、最も偉大と評されるイギリスの劇作家、詩人。1564年生まれ、1616年没(52歳)。四大悲劇『ハムレット』、『マクベス』、『オセロ』、『リア王』のほか、『ロミオとジュリエット』、『ヴェニスの商人』など、数多くの傑作を残し、現在も世界中で戯曲の舞台上演、映画化などが後を絶たない。

この記事を書いた人
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