この記事は最終更新日から1年以上が経過しています。内容が古くなっているのでご注意ください。
はじめに
高校入学後まもなく不登校になったというyuriさん。そんなyuriさんは今、「大学に通う毎日がとても楽しい」と笑顔を見せます。挫折から立ち直り、夢に向かって歩み続けるストーリーを追いました。
※掲載内容は取材時のものです。
今回の話し手
心理学部の大学3年生。全日制高校時代に不登校を経験し、通信制へ転入。その後自身の経験をもとに心理士を志し、大学受験に奮闘。子どもの心に寄り添う癒し手を目指し、日々勉強に励んでいる。
高校受験の失敗、そして不登校に
実は私、高校受験に失敗しているんです。第一志望だった公立高校に落ちてしまったんです。
その後、私立高校に受かって入学することになったのですが、そこも落ちた公立高校と同じくらいの偏差値で。運良く入学はできたものの、入学して早々、優秀な同級生たちと自分との間に大きなギャップを感じてしまいました。
中学時代の、詰め込み型の受験勉強と、所属していたバドミントン部のハードな活動も自分にとっては大きなストレスになっていました。それに加えて高校受験の失敗。
今思えば、この3つが大きな要因だったのでしょう。高校入学直前の春休みに体調を崩し、朝起きれなくなるなどの不調が表れ始めました。結局、入学して1週間ほどで学校に通えなくなってしまったんです。
通信制高校への転入
自分の不登校の直接の原因は、概日(がいじつ)リズム睡眠障害という病気です。普通は朝に目が覚めて夜に眠くなりますよね。そのリズムが乱れてしまい、夜に眠れなかったり、逆に昼に急激な眠気に襲われたりといった症状を繰り返すんです。常に時差ボケの状態、と言えばわかりやすいでしょうか。さらに、鬱っぽい症状も併発していました。
当時は自分がまさかそんな精神的な病気になるなんてという戸惑いとショックから、どんどん気持ちが塞ぎ込んでいって。結局、高校1年生の11月に高校を退学、12月から通信制高校に転入することになりました。
通信制に転入するにあたって「最終的には全日制高校と同じくらい通学できるようになること」を目標に掲げました。完全在宅コースもありましたが、私は「フレックスコース」という、好きな授業を選択できて、かつ、自分の体調に合わせて通学日数を選べるコースを選びました。
はじめは月1回の通学から始まって、途中に睡眠障害の治療のために入院したり、体調が悪くて学校に行けない時期もありましたが、卒業時には週4日は通学できるまでになりました。これは「フレックスコース」で設定できる上限の日数なので、結果的に目標は達成できたと思っています。
3ヶ月間入院した病院の散歩コース
自身の体調と相談しつつ、周囲のサポートを受けながら少しずつ新たな環境に慣れていったというyuriさん。そんななかで、期せずしてyuriさんは将来の夢を見つけることになります。
将来は子どもの心に寄り添う心理士に
中学生の頃から、高校卒業後は大学に進学するつもりではありました。でも具体的な目標はなく、心理学についてもまったく知らなかったんです。
心理学に興味を持つきっかけになったのが、スクールカウンセラーさんや病院の心理士さんとの出会いです。睡眠障害、不登校という悩みを抱える私に寄り添い、励ましてくれる人たちの姿を見て心理学という学問を知り、私も将来、自分と同じような悩みを抱えた子どもの役に立ちたいという強い思いが芽生えました。
そこから、進路は心理学が学べる大学一本に絞って探しました。なかでも子どもの心理やそのケアに私は興味があるので、今、大学では教育心理学や学校心理学、発達心理学などを中心に学んでいます。3年生からは「児童思春期臨床心理学演習」というゼミもスタートしました。
児童期から思春期って、人間にとって大事な時期だと思うんです。いろいろな情報や価値観に触れながら人格形成をしていく時期、それでいて対人関係や学校など集団生活の仕組みに大きなストレスを受ける時期でもあります。
私自身、学生時代にはつらい思いもたくさんしましたが、同時に、いい先生やカウンセラーさんとの出会いがあったから乗り越えられたとも思います。だから今度は、私がケアする側として子どもたちに寄り添いたいんです。
完治はせずとも“楽しい”が一番の薬に
高校時代に悩まされた睡眠障害については、今も完治には至っていません。でも昼間に眠くなることはほとんどなくなりましたし、自分の睡眠リズムを把握してそれに合わせて生活を送れるようになりました。病気と上手につき合えるようになったという感じですね。
何より、希望の学科に入学できたのが大きいと思います。この病気はストレスなど精神的な要因で症状が大きく変化する傾向があるので、大学で楽しく過ごせていることが自分にとって大きなプラスに働いていると感じます。
目下の目標は、大学院への進学です。スクールカウンセラーや心理士になるには臨床心理士という民間資格か、公認心理師という国家資格が必要なのですが、これらを取得するには大学院の卒業が必須となります。もちろん卒業するだけでなく、その後の試験に合格しなければいけないので、今は夢に向かって勉強を頑張っているところです。
友人と大学近くのラーメン店巡りをするのも楽しみのひとつ。yuriさんのお気に入りメニューは、パイナップルとアーモンド、魚のダシがつけだれになっているつけ麺だそう。
「今は大学生活が楽しい」と笑顔で語ってくれたyuriさんの「睡眠障害は完治していない」という言葉には驚きました。それでも病気と上手につき合いながら、夢に向かって日々努力する姿には、勇気づけられもしますし、見習うべきものがあると感じます。