この記事は最終更新日から1年以上が経過しています。内容が古くなっているのでご注意ください。
はじめに
新型コロナ感染拡大による影響で、学内での人間関係が希薄になっていることをきっかけとして、「新入生サポーター」の活動をスタートさせたyuriさん。心理学部の学生ならではの手法を活かしたこの活動は学内で高い評価を得たそうです。
コロナ禍の学生たちをつなぐ、新しい交流の場を作り出したその活動に迫ります。
※掲載内容は取材時のものです。
今回の話し手
心理学部の大学3年生。全日制高校時代に不登校を経験し、通信制へ転入。その後自身の経験をもとに心理士を志し、大学受験に奮闘。子どもの心に寄り添う癒し手を目指し、日々勉強に励んでいる。
コロナ禍で希薄になった縦のつながり
コロナによる影響で大学は休学になったり、オンライン授業が行われたりと、学内で人と人が顔を合わせる機会が激減しました。せっかく春に入学してきた新入生も同じ状況です。
そんな状況のなか、同じ心理学部の学生から「縦のつながりがまったくない。もちろん横のつながりも希薄だし学生同士のつながり作りをしたい」という声が上がりました。そこで同学年の7人で集まって“新入生サポーター”の活動を始めることにしたんです。
具体的な活動内容は、新入生と私たち上級生との関係性を構築して、会話の機会を設けること。とにかくコロナ禍で失われたつながりを作ることを最優先に考えました。
ところが、活動を始めようとしてすぐに壁にぶち当たりました。どうやってその活動を広めるのか、つまり“宣伝”です。新入生に参加してもらうにも、それを伝える手段がない。さてどうしよう?となった時に、教授から「学園祭の学科発表としてやってみたらどうか」とアドバイスをもらって。そこから本格的に活動が動き始めました。
心理学を活用した交流を企画
当時ほとんどの授業がオンラインでしたので、学園祭は学生同士が対面で話せる貴重な場でした。私たちはそこでグループワークの企画を立ち上げて宣伝し、新入生との交流の場を設けることにしたんです。
当日は、心理学を活用したアイスブレイクやゲームを行いました。アイスブレイクとは、初対面の人が出会う時の緊張をほぐすための手法ですね。
実施した企画としては、まず2人組を作ってそれぞれ自己紹介と他己紹介をしてもらいます。お互いの理解が深まり、少し仲良くなったところで次は2対2のグループを作るんです。で、またそれぞれ自己紹介と他己紹介をしてもらいます。そうして繰り返していくと、自然に打ち解けてきます。最終的には全員で輪になってゲームをし、より絆を深めるというものです。
ゲームは、すごろくトーキングをメインに行いました。これは普通のすごろくのようにサイコロを振りながらゴールを目指すものですが、マスの一つひとつに質問が書いてあるんです。マスに止まった人は、その質問に答えながらゴールを目指すんですね。
質問は、序盤は「今朝食べたものは?」などちょっとした話のネタになるようなものですが、進んでいくごとに「趣味」や「影響を受けた人」、「宝くじが当たったら」「人生とは」と徐々に深くなっていきます。すごろくというゲームをしながら、お互いの価値観や趣味嗜好がわかっていく仕組みです。
このようにグループで行う体験を通して心と心のキャッチボールを行う活動を、心理学的には“グループエンカウンター”といいます。学園祭では教授の指導のもと行い、結果的にこれが心理学部のアクティブラーニングとして認められるという結果を残すこともできました。
新入生サポーターとして活動している際のZoomでのブレイクアウトルームの様子
アップデートしながら継続的に取り組んでいきたい
学園祭での催しの後、参加した学生にアンケートを取ったところ「楽しかった」「こういう機会を設けてもらえてよかった」「初対面の人と話すきっかけがもっとほしい」などの意見がありました。
とはいえ学園祭のような機会はそう何度もありませんし、現在もまだオンライン授業は続いています。そのため今はZoomを使って同じようなゲームをしたり、時には悩み相談会をしたり、と交流を続けています。
今後の目標は“新入生サポーター”を定期的に開催するサイクルを確立することです。今のところ開催は不定期で、開催のタイミングに合わせて新入生たちに随時連絡している状態です。
もうひとつの目標は、もっと内容を充実させることです。授業の取り方やレポートの書き方などその時ごとにテーマを決めて、より実践的で役立つ内容を新入生に届けたいと考えています。
最初は“1年生サポーター”として始まったこの活動も、今は2年目を迎え参加者の人数も増えています。当時1年生だった学生も今はもう2年生。そのため、活動名を“新入生サポーター”と改めました。これからもっと新入生たちのニーズに応えられるように、活動自体もアップデートしていきたいです。
新入生の気持ちに配慮する先輩の思いやりと、心理学部の学生ならではのアイデアが組み合わされたすばらしい取り組みですね。今後の活動も楽しみです。