【スタプラ×ミライの武器 Vol.1】夢中になれるほどやりたいことを見つける方法

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はじめに

突然ですが、あなたはいまなにか夢中になれることがありますか? 部活、勉強、趣味……。もしも自分にはなにも夢中になれるものがない、という人は、「やりたいこと」よりも「やらなければいけないこと」に忙殺されているのかもしれません。

子ども時代に不登校を経験し、いまでは世界が注目するロボット開発者として活躍する吉藤オリィさんはこう言います。

“これからの時代は、たとえ「人と同じこと」「我慢してやるべきこと」だけを上手にこなせても、生きていくのは難しくなる。なぜならテクノロジーによって、世の中に存在していた「我慢してやるべきこと」はさまざまな形で解決されていくからだ。その一方で、「夢中になれること」がきみを救う。世界はまだなにも、完成していない。きみが「夢中になって取り組むこと」は、この世界でまだ見つかってない無数の価値や課題を見つけることになる。”

書籍「ミライの武器〜夢中になれるを見つける授業〜」(吉藤オリィ著)の中から「夢中になれるほどやりたいこと」を見つける方法をご紹介します。

みんなと違っても自分が思ったやり方でやってみる

将来なにになりたい? そう聞かれることもあるだろう。そんなときは堂々と「わかりません」と答えていいよ。わからないものを「わからない」と言うことは大切だ。世の中は変化しているからだ。

人類ははるか昔から進歩しているが、その変化のスピードは2000年ほど前と現代とではまるで比較にならない。たとえば人類の必需品である水道。家の中に蛇口がなかった昔、川から水を汲むというのは重労働だったし、水質に問題もあった。家に水道が通ったのはいまからたったの130年前のことで、60年前の時点でも、各家庭の水道の普及率は40%だった。夜でも部屋を明るく照らす「電灯」が、一般家庭に普及したのは1915年くらい。たった100年と少し前だ。まだ「コンセント」はなく、家電を使うためには電球のソケットから電気を分岐させるアタッチメントプラグというものを使っていた。日本でテレビが発売されたのが1953年で、携帯電話が普及しはじめたのが1990年。私たちの生活の「当たり前」が、「当たり前」になったのは本当に最近のことなんだ。

さらに2000年代よりも、2010年代の方が進歩のスピードが早い。20年前にタイムスリップしたら、きみは生活の不便さや価値観の違いに驚くことだろう。そして、次の10年間はもっと激しく進歩する。無数のモノやサービスが登場しては、消えていくだろう。いまの時点で「ユーチューバーになりたい」と心に決めたとしても、はたして10年後にユーチューブが存在しているかどうかもわからない。こういう時代を生きるには、「周囲にふりまわされず、新しいものを取り入れながら、自分にとって大切なことをやり続ける」ことが重要になる。

それは、「誰かに言われたからやる」というのでも、「誰かに嫌われないようにやる」というのでもない。自分と向き合うことが、これまで以上に重要になってくる。誰かに「それいいね!」と言われてはじめたことが、来年には時代遅れになっていることだってあるし、「ありえない……」と言われてやめかけたことが、後に賞賛を受けることだってあるからだ。

これからは自分が「ワクワクすること」を自由に考え、手を動かす時代だ。

性別も年齢も見た目も関係がない世界がやってくる

じゃあ、試しにちょっと自由に考えてみようか。
これは私の10年前。23歳のときの顔だ。もちろんいまでは顔が変わっている。しかし私のことを知っている人ならば、この写真を見れば少し若い頃の私だとわかる。

きみは見知らぬ他人の顔をぱっと見て、その人の年齢を当てることができるだろうか。見た目とギャップがある人もいるが、自分よりも年上か年下かくらいはだいたい想像がつくと思う。

年齢だけじゃない。私たちはいままで他人のことを、その人の顔と名前によって判別してきた。他人を見たときに、「怖そうな人だ」とか「優しそうな人だ」とか、見た目で判断することってあるよね。私たち人類は、生まれたときからずっと、自分の顔と自分の名前で、それが自分だと認識してきた。

当たり前? でも、そんな当たり前のことすらも変わるだろう。いまの時代の人は自分の見た目や名前を変えることもできる。まず整形しようと思えばできる。手術で全然別人の顔になれる。メイクや髪型を変えるだけでも、別人のようになれる。メガネをかけてマスクもすれば、その人が誰なのかほとんどわからなくなる。

私は昔から身体が弱かったため、何度もCT検査を受けてきた。CT検査というのは、エックス線を使って身体の断面を撮影するものだが、あの検査を受けると全身のデータが残る。そのデータは3Dデータだ。そのデータを3Dプリンタに入力すれば、そのままの形ができあがる(CT検査を受けたとき、お医者さんに言うとくれるよ)。つまり理科室に置くような自分の骨格標本や内臓標本をつくって、自分の部屋に飾ることができるわけだ。ワクワクしない?

CT検査じゃなくてもいい。きみの持っているスマホを使って、自分の顔をいろんな方向から撮影しておけば、そのデータを家庭用の3Dプリンタに入力することで、いますぐ自分の像ができあがる。自分の胸像をつくって、庭に置くとだってできる。

これは“フォトグラメトリー”という、写真データから3Dモデルをつくる、よく使われている技術だ。フォトグラメトリーによって、いまではスマホだけで簡単に世の中の物体を3Dデータ化できるようになっていて、3Dプリンタがその形状を出力してくれる。将来は、この可能性がさらに広がる。ある大手化学メーカーでは、皮膚に直接くっつけられるような素材を研究している。若い頃に撮った画像データを使って、自分の肌に合うようなマスクをつくり、そのマスクをかぶってしまえば、その頃の自分の顔に戻ることができるだろう。

つまり将来は、隣に座っている人が、道ですれ違う人が、旅館で出迎えてくれる人が、見た目通りの年齢・性別・人格ではなくなるかもしれない。そんな人たちに対して、私たちはどう接するべきか。「年上の人には敬語を使い、年下には使わなくていい」私はそんな常識にずっと違和感を抱いている。

「どうぶつの森」をはじめとするオンラインゲームの世界ではどうか。一緒に遊んでいる相手がどんな人だかわからない。大企業の社長かもしれないし、学校の先生かもしれないし、マンションの上の階に住む幼稚園児かもしれない。匿名のオンラインの世界では年齢も、社会的立場もまったく関係ない。よって、相手が目上の人かどうかを判断する必要がない。

その風潮はオンラインの世界だけではなく、これから現実の世界にも浸透していく。一緒になにかに取り組んだり、たまたま出会って遊んだりする相手が、「自分より年上か?」「男性か女性か?」「どういう立場の人なのか?」はどうでもよくなるわけだ。

その一方で「なにをやっている人なのか?」「自分と気が合う人か?」「一緒にいて楽しいか?」という点だけがクローズアップされる。自分だってそうだ。「自分はこんな人間」と決めてしまうことに、私は違和感を持つ。たとえば人は着ぐるみなどをかぶることで、普段ならば絶対やらないようなこともできるようになる。VR世界でかわいい少女になれば、かわいい少女っぽい動きをする中年男性もいる。

いまの時代を生きるきみはラッキー

私は23歳のときの顔のデータを残しているが、いずれ年老いたとき、そのマスクをかぶって鏡の前に立つこともあるだろう。その日は20代に混ざって大学のサークルに参加するかもしれないね。そんなわけで、私の顔はいずれ変わる。

吉藤健太朗という名前はすでに14年前から変えてある。折り紙が好きだから、吉藤オリィ。顔なんか変化するから、黒い白衣で覚えてくれたらうれしい。黒い白衣はiPhoneやTwitterが登場したくらいの時期、2006 年から15年間、私が毎日着ているものだ(同じ服が16着ある)。

黒い白衣を着ている人間が、白いロボットを持っていたら、だいたいそれが私だ。私を探したかったら、その二つを目印にしてほしい。こんな風に、“自分”や“あたりまえ”に縛られず、したいことを思いっきり考えて、実行できる。これが次の時代を生きるヒントだ。いまの時代を生きるきみはラッキーだ。人生はしょせん100年程度と短いが、その短い100年で世の中はずいぶん変わるし、自分で変えられる時代でもあるからだ。

私は車椅子や、ロボットをつくることが好きだ。実現したいことは、この世界から孤独をなくすこと。研究を続けていれば、私が生きている間に、孤独をなくす方法は見つけられると信じている。

これを読んでいるきみが誰だかわからなくてもいい。年上か年下かも、性別も立場も関係ない。私と同じ気持ちになってくれたら、いつか一緒に活動したい。

ミライの武器~「夢中になれる」を見つける授業~(サンクチュアリ出版)

吉藤オリィ(よしふじおりぃ)

株式会社オリィ研究所代表共同創設者取締役CEO。ロボットコミュニケーター。
デジタルハリウッド大学大学院特任教授。分身ロボット「OriHime」の開発者。
趣味は折り紙。
小学校5年から中学2年まで不登校。
高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004 年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)にて文部科学大臣賞を受賞。
翌2005 年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、グランドアワード3位に。 その時の出会いと自身の
経験から「孤独の解消」を人生のテーマと定め、高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学にて自身の研究室を立ち上げる。
その後、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発。株式会社オリィ研究所を設立し、「OriHime」の他、ALS等の難病患者向け意思伝達装置「OriHime eye」、車椅子アプリ「WheeLog!」、分身ロボットカフェなどを開発提供し、2016 年には「Forbes 誌が選ぶアジアの30 歳未満の30 人」に選ばれた。
著作に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)『サイボーグ時代』(きずな出版)がある。

この記事を書いた人
    Studyplus進路
    【なりたいが広がる「未来の自分」発見メディア】 受験のための勉強ではなく、自分の未来のために勉強へ。 本気で取り組みたい学問や、将来就きたい仕事を「発見」して、受験勉強を自分の未来のための通過点に変えていこう。

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