【スタプラ×ミライの武器 Vol.3】他人やAIにも替えられない自分だけの価値の見つけ方

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はじめに

あなたはいまなにか夢中になれることがありますか? 子ども時代に不登校を経験し、いまでは世界が注目するロボット開発者として活躍する吉藤オリィさんはこう言います。

“これからの時代は、たとえ「人と同じこと」「我慢してやるべきこと」だけを上手にこなせても、生きていくのは難しくなる。きみが「夢中になって取り組むこと」は、この世界でまだ見つかってない無数の価値や課題を見つけることになる。”

書籍「ミライの武器〜夢中になれるを見つける授業〜」(吉藤オリィ著)の中から「夢中になれるほどやりたいこと」を見つける方法をご紹介します。

ほしい情報を手に入れられるかどうかで生き方さえも変わってしまう

あれをつくってみたい。これをやってみたい。でも自分でゼロからやるのは大変そうだ。たくさんのお金と時間をかけて、難しい勉強をするか、いい大学に入るか、高度な技術を身につけるか。どれも無理そうだ。そう思って、あきらめていることはないだろうか。

たしかに昔はそうだったかもしれない。でもいまはまったくそんなことはない。いま必要なことは「どれだけうまく情報を集められるか」ということだけ。やりたいと思ったら、まずはとりあえず、やり方を調べてみよう。スマホで検索したり、図書館に行ったり、親や学校の先生に聞いたりしてみたら、案外簡単に方法が見つかるかもしれない。

いや当然、見つからない場合だってある。親だって学校の先生だって、知らな
いことはたくさんある。でも面白いことに、インターネット上にいる匿名の誰かに聞いたら、わかることが山ほどある。

たとえば、「紙粘土でつくったロボットに本物のモーターを入れて動かしてみたいんだけど、どうすればいいか方法を教えてください」そんな発信をしてみたら、「たぶんきみには難しいから、まず理系の学校に入って勉強したら?」という人もいる一方で、どこからか「アルディーノを使うといいよ!」っていう返信があるかもしれない。

すると、きみは「アルディーノ」について調べるだろう。まあ、せっかくなのできみも「アルディーノ」は覚えておこう。インターネットで調べればすぐに、まったく難しくないものだとわかる。組立ブロック玩具並みだ。説明書は全部インターネット上にあって、ユーチューブですごくわかりやすく解説されている。しかも簡単なプログラミングで動かすことができる。

プログラミングか。まったくわからないや。そうがっかりする人もいるかもしれないけれど心配ない。これについても誰かがつくってくれたプログラミングがインターネット上に存在するから、それをただコピペするだけで使える。だから、たったこれだけできみにも本物のロボットをつくることができる。そしてこんなにすごいものがAmazonで500円で買える。(モーターとかケーブルを含めても5000円くらいだ)ロボットの情報ひとつとってもこうなんだから、さまざまな知らないことについて、「誰かに教えてもらえる力」をつけていたらどうだろう?

このように、いまは「ほしい情報を手に入れられるか?」で生き方があっさり変わってしまう。自分がやってみたいことや、興味がある分野について、定期的に自分が持っている情報を発信したり、誰かの情報に反応したりしていると、だんだん世の中に知られていない貴重な情報が集まってくるようになる。その中にはきっと、きみの「やってみたい!」という気持ちのスイッチを押してくれるような出会いもある。独学で勉強することも大事だが、それ以上に大事なのは、ネットでつながれる多くの人の叡智を使って、ショートカットできるようになることだ。

「なりたい」ではなく「したい」を見つける

生まれてから一度くらい「将来なにになりたいか?」と考えたことはあるだろう。野球選手、銀行員、ユーチューバー、アニメ声優、政治家、ファッションデザイナー、アナウンサーなど、いろんな「職業」があるけれど、時代の変化が激しいいま、これからすごく苦労してなりたい職業につけたとしても、仕事の内容が変わってしまったり、その仕事自体が無くなっていたりするかもしれない。だからこそ「なにに憧れるのか」ではなく「なにがしたいのか?」を考えることはとてもきみの力になる。なにがしたくて大学に入るのか、なにがしたくて〇〇になりたいのか。「これがしたいから」と信じるものがあると、迷ったときの助けになりやすい。

きみの心を一番おどらせるのは、どんなときだろう。誰かに料理を食べてもらっているとき、絵をほめられたとき、ひたすら工作をしているとき、文章を書いているとき、謎に挑んでいるとき、大勢の前でスピーチをしているとき、人を笑わせているとき、人の悲しみを聞いてあげているときなど、きっとそれぞれだ。きみがすでに気づけているなら最高。もしまだなら時間をかけてもいいから、いろんな世界を体験し、自分の目で「したいこと」を見つけてほしい。

自分の「したいこと」で生きていけるほど、世の中は甘くないしと思うかもしれない。たしかに昔はそうだった。でもいまはネットがある。きみが「したいこと」を続け、発信を続けていれば、地球の裏側からでも、きみのそのユニークな仕事にお金を出してくれる人が現れる可能性がある。人の「能力」は、その人が持つ力そのものだと思われがちだが、実際は“喜ぶ人がどれくらいいるか”で計られている。

覚えておいてほしいのは、これから「したいこと」で生きていくためには、「こ の人にやってもらいたい」「この人につくってもらいたい」と思ってもらえるよ うな“他人との関係づくり”が大切になる。世の中は無情で合理的な方向に進んでいると思いがちだ。ところが私たちは安い店よりも、友人が営む店を選んで食事をする。少しくらい遠くても顔なじみの美容院へ行くし、長年かかりつけの町医者に通うじゃないか。

つまり関係性さえあれば、腕は一流じゃなかったとしても、ただの趣味でプロではなかったとしても、「今度のキャンプでごはんを担当してくれない?」「ギターを演奏してほしい」といった依頼を受けることがある。そのとき相手はプロの味や演奏を求めているのではなく、“きみ”にやってもらいたがっている。趣味からはじめ、喜ばれ、ほめられながらスキルアップし、少しずつお金を得る。そんなふうに「自分と気の合う人たちを見つけて、その人たちと生きていく」ということをめざしてほしい。

いまはインターネットを使って発信すれば、自分と気の合う人を見つけること ができる。ボランティアやインターン、オンラインゲームのオフ会など、出会いの場もたくさんある。「自分さがしの旅」とは、きみのすることをよろこんでくれる人をさがす旅でもある。そしてそのつながりを無理なく少しずつでも広げていけば、いつかきみは多くの人から、職業そのものではなく「きみ自身」として必要とされるようになるだろう。

それは時代が変わっても、他人やAIなどに替えることのできないきみだけの価値だ。

ミライの武器~「夢中になれる」を見つける授業~(サンクチュアリ出版)

吉藤オリィ(よしふじおりぃ)

株式会社オリィ研究所代表共同創設者取締役CEO。ロボットコミュニケーター。
デジタルハリウッド大学大学院特任教授。分身ロボット「OriHime」の開発者。
趣味は折り紙。
小学校5年から中学2年まで不登校。
高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004 年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)にて文部科学大臣賞を受賞。
翌2005 年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、グランドアワード3位に。 その時の出会いと自身の
経験から「孤独の解消」を人生のテーマと定め、高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学にて自身の研究室を立ち上げる。
その後、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発。株式会社オリィ研究所を設立し、「OriHime」の他、ALS等の難病患者向け意思伝達装置「OriHime eye」、車椅子アプリ「WheeLog!」、分身ロボットカフェなどを開発提供し、2016 年には「Forbes 誌が選ぶアジアの30 歳未満の30 人」に選ばれた。
著作に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)『サイボーグ時代』(きずな出版)がある。

この記事を書いた人
    Studyplus進路
    【なりたいが広がる「未来の自分」発見メディア】 受験のための勉強ではなく、自分の未来のために勉強へ。 本気で取り組みたい学問や、将来就きたい仕事を「発見」して、受験勉強を自分の未来のための通過点に変えていこう。

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